竜探しの便利屋

玉雫

第1話 ある日の便利屋

 今日私はこれで何度目かもわからないペット探しの依頼を終えた。


 私は基本的に依頼を受ける時は『赤竜の情報』の提示を絶対条件としている。


 しかし、そんな私にも例外はある。


 それは、ペット探しだ。


 私はペットの雌桃竜『サクラ』がいなくなった時の悲しみを誰にも感じてほしくない。


 だから私はペット探しの依頼だけはただで受けている。


 「ミューちゃん、会いたかったよ。大丈夫?どこも痛くない?」


 「にゃあ」


 「そっか!おねえちゃんありがとう」


 「どういたしまして。次ははぐれないように顔つけてね」


 「うん!」


 ああ、この少女の笑顔がたまらん。


 もちろん少年の笑顔もたまらん。


 「この度は本当にありがとうございます」


 「どこも悪いところもなく健康体で見つかって良かったです」


 たまにボロボロだったり何か病気にかかっていることも多いからね。


 無事見つかって本当によかった。


 「こちら、少ないですがお礼です」


 「よろしいのですか?」


 「ええ、むしろこれしか渡すことができないのが申し訳ないです」


 ああ、このお母さんもいい人だ。


 「いえ、どんなお礼でも嬉しいです。遠慮なくいただきます」


 くれると言ってくれたものは貰わない方が失礼だ。


 「本当にありがとうございます。では、失礼します」


 「バイバイおねえちゃん」


 「バイバイ」


 ああ、いい仕事したな。


 カラン


 ん?新しい依頼人かな?


 「こちら便利屋『ザゼンソウ』です」

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