第3章:脅威のウイルス

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アステリア号がプロキシマ・ケンタウリbに向けて順調に航行を続けている中、船内は日常業務に戻っていた。クルーたちはそれぞれの任務に専念し、宇宙の旅路を楽しむ余裕も出てきていた。しかし、その平穏は長くは続かなかった。


ある日の朝、科学部門の主任、エミリー・サトウが急に体調を崩した。彼女は朝食の最中にめまいを感じ、気分が悪くなった。


「エミリー、大丈夫か?」隣に座っていたエンジニアのジョン・スミスが心配そうに声をかけた。


「少し気分が悪いだけ…でも、このめまいは尋常じゃない。」エミリーは額に汗を浮かべ、息も荒くなっていた。


2


すぐにドクター・ミヤケが呼ばれ、エミリーは医務室に運ばれた。彼の診断は迅速だったが、エミリーの症状は急速に悪化していた。高熱、激しい頭痛、そして全身の痛みが彼女を苦しめていた。


「これはただの風邪やインフルエンザではない…」ドクター・ミヤケは深刻な表情で正隆に報告した。「何か未知のウイルスが彼女を侵しているようです。」


「他のクルーに感染が広がる可能性は?」正隆は心配そうに尋ねた。


「その可能性は否定できません。すぐに隔離措置をとり、感染経路を特定する必要があります。」


3


西海正隆は全クルーに非常事態を宣言し、感染拡大を防ぐための措置を講じた。感染が疑われる者たちは隔離室に移され、船内の各部門には厳重な消毒と防護措置が取られた。


「船長、私たちもマスクを装着し、定期的に消毒を行う必要があります。」ドクター・ミヤケは冷静に指示を出した。


「了解だ。全員に指示を徹底する。」正隆はすぐに行動を開始し、クルーたちに感染防止のためのガイドラインを伝えた。


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しかし、ウイルスは想像以上に強力だった。エミリーに続き、数名のクルーが次々と体調を崩し始めた。ドクター・ミヤケと医療チームは、ウイルスの特性を解明するために懸命に働いたが、時間との戦いだった。


「このウイルスは非常に早く広がり、感染者の免疫システムを攻撃します。私たちは早急にワクチンを開発しなければならない。」ドクター・ミヤケは緊張した声で言った。


西海正隆は彼の肩に手を置き、力強く言った。「君ならできる、ミヤケ。全力でサポートする。」


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ドクター・ミヤケは昼夜を問わず研究に没頭し、数日間の不眠不休の努力の末、ついにワクチンの試作品を完成させた。


「船長、これが試作品です。まだ効果が保証されているわけではありませんが、これ以上待てません。」ドクター・ミヤケはワクチンを手にし、正隆に見せた。


「よくやった、ミヤケ。早速エミリーと他の感染者に接種しよう。」西海正隆はすぐに行動に移した。


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ワクチン接種が行われ、西海正隆はその結果を見守った。数時間後、エミリーの症状は次第に和らぎ、彼女の体調は回復に向かっていた。


「効いている…ワクチンが効いている!」ドクター・ミヤケは安堵の表情を浮かべた。


他の感染者たちも次第に回復し、船内には久しぶりに安堵の空気が漂った。西海正隆はクルーたちの努力と団結に感謝し、彼らの勇気を称えた。


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「皆、よくやった。この困難を乗り越えたことで、我々の絆はさらに強くなった。」西海正隆はブリッジでクルーたちに語りかけた。「これからも様々な困難が待ち受けているだろうが、我々なら必ず乗り越えられると信じている。」


クルーたちは一斉に拍手をし、西海正隆の言葉に応えた。彼らは再びそれぞれの任務に戻り、プロキシマ・ケンタウリbへの旅を続けた。


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数日後、西海正隆はドクター・ミヤケと共に船内の健康管理システムを見直し、再発防止策を講じることにした。


「ウイルスの脅威を二度と繰り返さないために、もっと徹底した衛生管理を行う必要があります。」ドクター・ミヤケは提案した。


「その通りだ。今後のためにも、全員がこの経験から学ぶことが重要だ。」西海正隆は同意し、新しい衛生ガイドラインをクルー全員に周知徹底させた。


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アステリア号の航海は再び順調に進み始めた。クルーたちは困難を乗り越えたことで一層結束し、互いに信頼し合うようになった。西海正隆はその様子を見守りながら、プロキシマ・ケンタウリbへの到達を楽しみにしていた。


「船長、星系に到着するまであと数週間です。」副船長の岩崎が報告した。


「了解だ。皆が無事にここまで来られたことに感謝する。」西海正隆は岩崎に微笑んだ。


10


西海正隆はブリッジの窓から広がる宇宙の景色を見つめ、これからの冒険に思いを馳せた。彼の胸には新たな決意がみなぎっていた。未知の惑星での発見と、地球の未来を救う使命が彼を待っている。


「俺たちはここまで来た。そして、これからも進み続ける。」西海正隆は静かに誓いを立てた。

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