第1章:出発の決意
1
西暦2205年、地球の環境危機はもはや避けられない現実となっていた。海面の上昇、気候変動、資源の枯渇…これらの問題に対する解決策は尽きかけていた。人類の存続のために、新しい居住地を見つけることが急務となり、多国籍の科学者やエンジニアたちが集結し、宇宙探査の大規模プロジェクトが発足した。
2
探査船「アステリア号」の船長である西海正隆は、そのプロジェクトの中心に立っていた。経験豊富な宇宙飛行士であり、科学者でもある彼は、地球の未来を託された一人だった。彼は東京の宇宙センターでの出発準備を終え、家族との最後の時間を過ごしていた。
「お父さん、本当に行っちゃうの?」小さな娘の紗枝が涙目で正隆に問いかけた。
「紗枝、お父さんは地球を救うために行くんだ。君たちの未来を守るためにね。」西海正隆は優しく娘の頭を撫でながら答えた。
妻の美咲も心配そうに見つめていたが、彼の決意を理解していた。「気をつけてね。無事に帰ってきて。」
「もちろんだ。必ず帰るから。」西海正隆は微笑み、家族を抱きしめた。
3
出発の日が来た。アステリア号のクルーたちは、緊張と興奮を胸に抱き、発射台に向かった。西海正隆はクルーの面々を見渡しながら、彼ら一人一人と目を合わせた。
「皆さん、私たちはこれから未知の領域に挑むことになります。このミッションは地球の未来を左右する重要なものです。一丸となって乗り越えましょう。」
クルーたちは一斉にうなずいた。彼らは科学者、エンジニア、医師、そして軍人であり、それぞれが専門知識と技術を持ち寄っていた。
4
アステリア号が発射台にセットされ、カウントダウンが始まった。正隆はコックピットで座席に深く座り、操作パネルを確認した。
「エンジン準備完了。全システム正常。」副船長の岩崎が報告した。
「了解。カウントダウン開始。」西海正隆は深呼吸し、心を落ち着かせた。
「10、9、8…」カウントダウンの声が響く中、西海正隆は家族の顔を思い浮かべた。地球に残る全ての人々のために、このミッションは成功しなければならないと強く思った。
「3、2、1、リフトオフ!」
轟音と共にアステリア号は地球を離れ、宇宙へと旅立った。窓の外には青い地球が遠ざかり、無限の宇宙が広がっていた。西海正隆はその光景を見つめながら、新たな冒険の始まりを実感した。
「これが俺たちの新しい旅路だ。」正隆は小さくつぶやいた。
5
宇宙空間に出たアステリア号は、プロキシマ・ケンタウリbを目指して航行を開始した。船内では、各部門のクルーがそれぞれの任務に取りかかり、探査の準備を進めていた。正隆は船長室に戻り、プロジェクトの詳細な計画を再確認した。
「船長、エンジニアリング部門からの報告です。全システムが正常に作動しています。」通信士の山本が報告を入れた。
「了解。引き続き監視を続けてくれ。」西海正隆は返答し、データを確認した。
彼は自分の決断が正しいことを信じ、クルーたちと共に困難を乗り越える覚悟を新たにした。新たなフロンティアへの旅が始まったのだ。この旅が地球の未来を切り開く一歩となることを、彼は確信していた。
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