第七章: 「影の館」

正隆と玲子は次の目的地として、長野県の山間にある「影の館」と呼ばれる古い屋敷に向かうことにした。この館はかつて名家の所有であったが、現在は廃墟となり、数々の怪奇現象が報告されている場所だった。

影の館の噂


影の館については、地元の住民たちの間で様々な噂が飛び交っていた。館の中では夜な夜な奇妙な声が聞こえ、無数の影が彷徨っているという。さらに、館に足を踏み入れた者たちは恐ろしい幻覚を見たり、身体の一部が麻痺するなどの現象に見舞われるとされていた。


正隆と玲子は地元の図書館で館に関する古い記録を調べ、過去の事件や住人たちの情報を集めることにした。図書館の司書である中村さんは、影の館にまつわる古い新聞記事や記録を見せてくれた。


「この館はかつて名家のものだったが、ある日突然、住人たちが次々と謎の死を遂げた。それ以来、館は封鎖され、廃墟となっている。」中村さんは静かに語った。


「その住人たちの霊が今も館に留まっているということですか?」正隆は興味深げに尋ねた。


「そうかもしれない。特に、館の主だった人物の霊が強い影響力を持っていると言われている。」中村さんは頷いた。

館への潜入


正隆と玲子は必要な道具や護符を準備し、影の館へと向かった。館は山の中腹に位置し、周囲には鬱蒼とした森が広がっていた。館の門は錆び付き、庭は荒れ果てていたが、二人は慎重に進んでいった。


「ここが影の館か…確かに不気味な感じがする。」正隆は館を見上げながら呟いた。


「気をつけて。何が起こるかわからないから。」玲子は周囲を警戒しながら言った。


二人は館の中に足を踏み入れた。中は暗く、埃が積もり、古い家具や装飾品が朽ち果てていた。館の中を進むにつれ、奇妙な気配が漂い始め、二人の心臓は高鳴った。

影との対峙


正隆と玲子は館の奥にある大広間にたどり着いた。そこには古い肖像画が飾られており、館の主と思われる人物の姿が描かれていた。突然、広間の空気が一変し、冷たい風が吹き始めた。壁に映る影が動き出し、二人に迫ってきた。


「ここからが本番だ…」正隆は深呼吸をし、呪文を唱え始めた。


「古の霊よ、我が声を聞き、安らぎの地へと導き給え…」


影はますます濃くなり、形を変えながら二人に襲いかかろうとした。正隆と玲子は恐怖を感じながらも、決して怯まずに呪文を唱え続けた。影が二人に迫る中、古い肖像画が淡い光を放ち始めた。その光が影に触れると、影は一瞬後退したが、再び強力な力で二人に襲いかかろうとした。


「光の守り手よ、我らの力を貸し、この地を浄化せよ!」


最後の呪文を唱えると、広間全体が強烈な光に包まれ、影は光に触れた瞬間に消え去った。冷たい風も止み、静寂が戻った。二人は息をつき、成功を確認した。


「やった…本当にやったんだ…」正隆は息を切らしながら言った。


玲子も安堵の表情を浮かべ、「封印は再び強化されたわ。でも、これで全てが終わったわけじゃない。私たちがこの場所を守り続けることが必要よ。」と応えた。

新たな手がかり


影の館の問題を解決した後、正隆と玲子は再び村に戻り、地元の人々に報告をした。村の住民たちは二人の勇気と努力に感謝し、館の霊的な問題が解決されたことで村は再び平和を取り戻した。


しかし、正隆と玲子は新たな手がかりを掴んでいた。影の館の古い記録の中に、日本各地に存在する他の霊的な問題に関する情報が記されていたのだ。


「次の目的地は決まったわね。私たちはまだまだ旅を続ける必要がある。」玲子は微笑みながら言った。


「そうだな。この旅が私たちをどこに導くのか、楽しみだ。」正隆も同じく決意を固めた。


二人の冒険はまだまだ続く。新たな使命とともに、彼らは次の目的地へと向かっていった。

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歴史の呪縛 西海正隆 @nishiumimasataka

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