SWAMP

朱雀竜司

プロローグ

それは10年から始まった。


4月中旬天気は曇り、空気が湿っていてもうすぐ雨が降るだろうなと思わせられた。

5時間目で生徒たちはみんな眠たげに机にむかっている。その時たまたま一人の生徒が外を見て気づいたのだ。


「先生、なんか運動場がおかしいです」


外を見てみると見慣れた運動場が真っ黒になっていた。


「なんだあれは」


クラスは騒然とした。

よくよく見てみると運動場の表面の黒い部分が水が沸騰しているかのようにボコボコと泡立っている。


すぐに校内放送があり教室から出ないようにと指示をされた。授業は中断、先生と生徒たちは窓際に張り付いて様子を伺っていた。


すると突然運動場のちょうど真ん中が大きく膨らんだ。

声をあげる間もなく、そこから黒いどろどろした大きな何かがうじゃうじゃと湧き出てきた。


一人の生徒が悲鳴をあげて、それが合図となり教室は大混乱に陥った。泣き叫ぶもの、教室を飛び出していくもの、親や警察に電話するもの、写真を撮るもの......。


騒ぎは黒い何かたちの耳にも届いていた。それらは大きな足音と歯音を鳴らしながら校舎内に入ってくる。窓を割って、壁を破壊して。

そしてその学校は阿鼻叫喚の地獄と化したのだった。


この10年前の出来事は「はじまりのスワンプ」として今でも多くとりあげられている。

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