サい後のバス。でも。

嗚呼烏

仲の良い二人組

「こんな時間に俺を呼ぶって、どんな要件だ?」

腕時計の針は八時四十分を表す。

とぼける俺。だが、予想はついている。

春斗はると、見て。」

花波かなみが指した場所には、古臭いバス停留所があった。

「まあ、予想はついていた。占いのバス停留所に来ることが目的だろ?……それにしても、こんな場所だったんだな。」

俺たちは、心霊現象の話が好きという共通点がある。

「というか、俺を選ぶ意味は無いんだけどな。えっと、『仲の良い二人組』だって。」

これ以外にすることがなければ、空気も凍るなんてことは火を見るより明らかだ。

「……占いのバス停留所は標識版の前に立つ人によって、結果が変わるところが醍醐味だろ? このバス停留所に一人の人が来たとしても、結果は表示されないんだぞ?」

お互いの目が、お互いの目を見つめる。

「……そもそも、俺はここに無関心だったよ。俺が好きな心霊現象は、身体がすくむようなものだから。」

俺が心霊現象に強いからか、最近はそんな心霊現象が見つからないんだけどな。

「……俺はずっと思う。サバイバルナイフを持ってくるぐらい怖いならば、心霊現象にわざわざ関わらなきゃいいのに。」

花波のショルダーバッグの中の不穏な光を放つものに視線を向ける。

「……勝手でしょうが。」

俺は善意で言っているんだがな。

「……というか、知らないの? このバス停留所には、一ヶ月に一回くらいの頻度で『デモ。』というバスが来るっていう情報。」

花波はおもむろにスマートフォンを取り出すと、液晶をこちらに向ける。

「こんな電子掲示板あるんだ。知らなかった。」

新たな出会いに、少し興奮を覚えた。

「ちゃんと、心霊現象を専門とした電子掲示板か。」

知る人ぞ知るという言葉が似合うような、背筋が凍る話も記載されている。

この話はかなり前に知っていた話だが、これを載せるなんて。

本格的な電子掲示板であろう。

「怖すぎる心霊現象は好きじゃないけれど、あなたの話に共感したかったから頑張ったんだよ。この電子掲示板を閲覧すること。なのに、知らないなんてね。」

厭味たらしく言われたが、人が完璧じゃないなんて当然だ。

「噂をしたら、来たわよ。」

墨で塗られたのかと疑いたくなるほどに烏羽色のバスが、占いのバス停留所の前で瞬停した。

「何も分からないんだけど……」

俺の手が彼女の手に操られる。

「春斗は心霊現象好きだから大丈夫でしょう?」

下調べぐらいさせてくれよ。

そんなことを言う暇もなく、俺の体は禍々しい雰囲気のバスにおさめられる。

顔には出さなかったが、怪訝だ。

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