第59話 リアム、三人を幸せにする

「……」

「リアムくん、今は静かにする時じゃなくて口を開いて話す時だよ?今の今まで、リディアちゃんとどんなことしてたの?」

「そ、それは……」


 今の今まで、リディアさんとどんなことをしていたのか……僕は、ついさっきのことを思い出すと────つい顔に熱を帯びさせてしまって、言葉を詰まらせる。

 すると、メリアさんが言った。


「私たちに言えないようなことしてたんだ〜?でも、その割には手を繋いで帰ってくるなんて、どういうアピールなのかな?」

「こ、これは、その……」


 ついさっきのことを思い出してしまったのと、メリアさんや女帝さんにどう答えれば良いのかわからないということで僕がまたも言葉を詰まらせていると、僕の隣に居るリディアさんが言った。


「リアムさんのことを愛している私が、リアムさんと愛し合ったというだけのことです……至極当然のことだと思われますが、一体何をそんなに怒られているのですか?」

「愛し合っ……別に、リアムくんとリディアちゃんが愛し合うこと自体は良いと思うよ?ただ、私もリアムくんのこと大好きなんだから、一人で勝手に独り占めするのは良くないよねって話だよ」


 それに続いて、女帝さんが頷いて言う。


「その通りだ……リアムには私の男になってもらうのだから、君の勝手にされては困る……もしそれでもリアムを譲るつもりが無いというのなら────リアムを懸けて、君に決闘試合を申し込ませてもらおう」

「え!?け、決闘!?」

「良いでしょう、アストリアの名に懸けて、挑まれた決闘には────」

「ちょ、ちょっと待ってください!」


 その決闘を引き受けようとしているリディアさんの言葉を遮ると、僕は一歩前に出て言った。


「仲間同士で争うなんてダメですよ!リディアさんも女帝さんも、それにメリアさんも優しい人なんですから、優しい人同士で戦うなんて絶対にダメです!」

「リアムさん……」

「リアムくん……」

「……仲間、か……そんな風に言われたのも、優しいと言われたのも、生まれて初めてだな」


 僕がそう伝えると、三人は一度落ち着いてくれた様子で、メリアさんと女帝さんは体から放っていた魔力を抑えてくれた。

 そして、少し間を空けてからメリアさんが言う。


「ねぇ、改めて一個ちゃんと確認しておきたいことがあるんだけど……リアムくんとリディアちゃんって、の?」

「はい」

「っ!やっぱりずる〜い!」


 大きな声でそう言うと、メリアさんは続けて言った。


「私もリアムくんとそういうことしたいのに、リディアちゃんだけずるい!」

「同感だ……私も女として性を受けた以上、やはり私より強き者に抱かれたいと願ってしまう」

「……」


 前に、リディアさんとメリアさんが僕のせいで仲良くできず戦った時、僕は一つ思ったことがあった。

 ────僕のせいで、僕のことを大切に想ってくれる人たちが争うなんて嫌だ。

 そう思った……だから。


「リディアさん、僕……」


 僕が今思っていることは、僕と体を交えて愛し合ってくれたリディアさんに許しを得ないと許されないことのため、僕がその内容を口にしようとすると────リディアさんには僕が何を言おうとしているのかもうわかっているのか、優しく微笑んで言った。


「私は、リアムさんのお優しきお心が導き出した考えであれば、どのようなものでも受け入れます……ですが、改めて────私がリアムさんの初めてのお相手であり、未来永劫共に居続ける者だということを、お忘れにならないでくださいね」

「っ……はい!リディアさん、ありがとうございます!」


 リディアさんの温かさに感謝を伝えると、僕は三人に向けて言う。


「リディアさん、メリアさん、女帝さん……僕は、僕のことを大切に想ってくれている優しい三人が、僕のせいで争ってしまうなんて嫌なんです……だから────僕が三人を幸せにしてみせるので、みんなで一緒に幸せになってくれませんか!」


 僕がそう伝えると、メリアさんと女帝さんは驚いたように目を見開いた。

 そして、少し間を空けてからメリアさんが言う。


「……リアムくん一人で、私たち三人のことを幸せにしてくれるの?」

「はい!」

「……じゃあ────」


 続けて、メリアさんは僕の方に近付いてきてくると、僕と左腕を組んで楽しそうにしながら言った。


「夜とか結構大変だね?言っておくけど、私多分一回とか二回だけじゃ満足できないからね?」

「え、えっ!?」


 さらに続けて、女帝さんが僕の方に近付いて来て言った。


「君が私の男になってくれるのであれば、私に異論は無い……ふふ、これからは夜が楽しみだな」


 そう言うと、女帝さんは小さく口角を上げて、僕と右腕を組んできた。

 そして、最後にリディアさんが僕の目の前にやって来ると、僕のことを正面から抱きしめてきて優しい声色で言った。


「お二人のことを幸せになされるのも良いですが……私のことも、しっかりと愛してくださいね」

「っ……!はい……!僕が、三人を幸せにします!!」


 これから、大変なこともたくさんあると思うけど────この三人と一緒なら、僕はどんなことでも乗り越えられるような気がした。

 そして、そんな三人のことを────僕が、絶対に幸せにしてみせる!!

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