第55話 メリア、後悔させる
僕たち四人が移動魔法を使用してマスクをしている男性の後を追うと、すぐに追いついてその男性のことを路地裏の角際に追い詰める事ができた。
「エルフの国にあんなことしておいて、自分だけは逃げられると思ってるの?」
「っ……そこの人間の男さえ居なければ、今頃あの冒険者の男たちが巨大樹を破壊し、全ては計画通りに行っていたというのに……」
そう言って、マスクをしている男性は僕のことを見てきた。
冒険者の、男たち……
「っ!もしかして、ゼインさんたちのことも、あなたが?」
僕がそう聞くも、マスクをしている男性は何も答えてくれなかった。
すると、メリアさんがそれに答えてくれる。
「そうだよ、エルフの国を滅ぼそうとした奴の容姿を聞いたのはあいつのパーティーメンバーからだからね……まぁ、とは言っても、こんな奴の口車に乗せられて本当にエルフの国を滅ぼそうとしたあいつらも許せないけど────あいつらに対する報復はとりあえず今日のところは十分だから、次は……」
そう言いながら、メリアさんはマスクをしている男性の方に視線を送る。
すると、そのやり取りを見ていた女帝さんが言った。
「ほう、どのみちリアムに攻撃しようとしたのだから許すつもりは無かったが、私の許可も無くエルフの国を滅ぼそうとしたというのは本当らしいな」
「っ!お、お待ちください、女帝様!」
マスクをしている男性は慌てた声色でそう言うと、続けて言った。
「私はただ、この魔族の国を思えばこそ、巨大樹の弱っているエルフの国を滅ぼすことでそこに住まうエルフを魔族の国の支配下に置ければ、魔族の国はさらに勢力を大きくできると思いしたことなのです!」
「私がいつ、そんなことをしろと命じた?」
「そ、それは……し、しかし────」
「もう黙って」
その男性の言葉を遮るようにしてメリアさんがそう言うと、メリアさんはその男性の全身を氷魔法によって一瞬凍らせた。
そして、すぐに解凍すると、マスクをしている男性は呼吸を整える。
「っぐぁ、がっ……」
「一応女帝ちゃんに聞いておくけど、こいつのこと、どうにでもして良いよね?」
「あぁ……勝手な判断で勝手なことをし、多くの者を苦しめようとした魔族のことまで、私が守るような義理は無いし、エルフである君の気持ちを考えればここで君の行いを止めることなどできるはずもない……それに────むしろ、私からも制裁を加えねばならないな」
そう言って、女帝さんがマスクをしている男性のことを鋭い目つきで見ると、それを確認したメリアさんは、今度はリディアさんの方を向いて言う。
「……じゃあリディアちゃん、こいつがリアムくんに不意打ちで攻撃した分までちゃんと私が返しとくから、リアムくんと一緒に宿に戻っててもらってもいかな?今からこいつに、リアムくんには聞かせられないような声上げさせることになるから」
「ひっ……!」
マスクをしている男性は、そのマスクの奥から恐怖の声を上げた。
……僕には聞かせられないような声?
「それは、どういう────」
「この手でそのことを悔いさせられないのは残念ですが、そういうことであれば後はあなた方お二人にお任せします……ではリアムさん、私たちは一足先に宿へ戻りましょうか」
「え……?は、はい」
メリアさんの言葉の意味がわからなかったけど、今はひとまずメリアさんとリディアさんの言う通りに、リディアさんと二人で宿に戻ることにした。
◆◇◆
「リアムくんも居なくなったし、今からエルフの国を滅ぼそうとしたこととリアムくんに不意打ちなんて汚いことをしたこと、後悔させてあげる」
「お、お許し────」
「彼女は故郷を滅ぼされかけたんだ、許せるはずもないだろう……そして、私も君のことを許すつもりはない」
「ひっ……ひぃっ!!」
その後、路地裏には、マスクをしている男性の悲鳴が連続的に響いた。
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