第37話 リアム、褒め合う
防寒具を購入した後。
その他に旅をする上で必要そうなものも購入し終えた僕たちは、今から早速雪国である魔族の国へ向かうため、お店の試着室を借りて防寒具を着ることにした。
一番最初に防寒具を着終えた僕が二人のことを待っていると────
「じゃ〜ん!リアムくん、どう?似合ってるかな?」
赤とピンク色で出来た、肩から膝下まである綺麗な模様の入っている羽織ものに、同じく赤とピンク色でできた防寒具を着たメリアさんが出てきた。
それがメリアさんに似合ってるかと聞かれれば、迷うまでもなく────
「似合ってると思います!」
「本当!?リアムくんにそう言ってもらえると嬉しいな〜!リアムくんも、そのコート似合ってるよ!」
「あ、ありがとうございます!」
……それにしても、本当に赤とピンク、そしてその服の見た目も魔法使いであるメリアさんにはピッタリだ。
それに……防寒具を着てくれていると、いつもの際どい服が下に隠れるから、そういう意味でも今後しばらくは安心────と思っていた時。
「っ!?」
メリアさんは、防寒具の首元辺りを少し下に引っ張ると、メリアさんの大きな胸元の谷間を覗かせてきた。
「メ、メリアさん!?」
僕がそのことに驚いて思わず目を閉じると、メリアさんが笑いながら言う。
「リアムくん顔真っ赤〜!防寒具着てたら私の体見えなくて安心、とか思ってたんでしょ?もう〜!本当可愛いんだから〜!」
「そ、そんなことは……」
無い、と言い切りたかったけど、実際メリアさんの言っていることは正しかったため、それを言い切ることはできなかった。
そんな僕のことを見てメリアさんが楽しそうにしていると、試着室のカーテンが開いた音が聞こえてきた。
「────全く、あなたという方は、いつもリアムさんのことを困らせていますね」
そんなリディアさんの声が聞こえてきたため、目を開いてその声の方を向くと、そこには胸元と肩、手首に鎧を着て、その下には気品を感じるボタン付きの白の服を着たリディアさんの姿があった。
一見すると今までとあまり違うように見えるけど、ところどころの細かい部分の服の作りが違っていて、特に今までは鎧の下にボタン付きの服を着たりはしていなかったため、リディアさんからまた今までとは少し違う品性のようなものを感じた。
「別にいつもじゃ無いから〜!ていうか、リディアちゃん思ったより防寒具って感じの見た目じゃないね」
「お二人の防寒具もそうだと思われますが、私のものにも魔法によって縫われた魔法繊維が使われておりますので、見た目は薄くとも寒さには耐性のある素材となっています」
「あ〜!やっぱりそういうこと?魔法繊維がこういう普通のお店でも使われてるのはエルフの国の利点の一つだよね〜」
「そうですね」
そんな会話をした後、二人は同時に僕のことを見てくると、リディアさんが言った。
「リアムさんの黒を基調した白も混ぜられているコートのような防寒具、とてもお似合いだと思います」
「っ……!あ、ありがとうございます!」
「私も思った〜!カッコいいよね〜!」
「はい、無論それはいつものことですが」
「っ……!!」
僕は二人に褒められて少し照れてしまったせいで、顔に熱を帯びさせた────だけど、そういうことならと僕も二人に伝えさせてもらうことにした。
「ぼ、僕も!お二人のことをずっと綺麗な方だと思ってます!!」
「っ!?」
「え、ええっ!?」
僕が力強くそう伝えると、二人は頬を赤く染めて言った。
「リ、リアムさん、そのようなことを直接的に言われると……!」
「え〜!リアムくんに綺麗って言われちゃった〜!幸せ〜!」
その後、僕たちは互いを褒めたことによって照れたりもしてしまったけど────少し時間が経ってから気持ちを切り替えると、僕たちは魔族の国に向かうべく、エルフの国の出入り口となる門へ向かった。
◆◇◆
────一方その頃。
「ああああああああっ!!」
「ゃあああああああっ!!」
「わあああああああっ!!」
ゼインたちを吹き飛ばし続けていたリアムの風魔法がようやく弱まると、ゼインたちは地面に衝突した。
本来であれば大怪我、どころかそれ以上のことになっていてもおかしくないが、不思議と痛みは風魔法で吹き飛ばされ続けていたことによるものだけで、衝突による痛みはほとんど無かった。
「クソッ、あいつ、俺たちのことを意味わかんねえ距離吹き飛ばしやがって……!お前ら、無事か?」
「う、うん、なんとか……」
「ってて……」
ひとまず、パーティーメンバーたちの無事も確認できたところで、ゼインは地面に手を付いて立ちあがろうとした────が、その時。
「冷てっ!?」
ゼインは、思わずその地面の冷たさに驚き、その地面を見るとそこには雪が積もっていた。
「そうか、衝撃の痛みが無かったのは雪のおかげ────雪!?」
そう驚きの声を上げて周りを見回したゼインは、辺り一帯が雪で覆われていることに気付き、その光景に愕然とする他無かった。
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