育ち盛りに木をつけて。

恐ろしいほどに鮮やかな白黒の世界

育ち盛りに木をつけて

 根を張る。葉を広る。ここはまだ、暗い。

 初めて感じることばかり。


 楽しさ、悔しさがあって、はるか高みを夢に見る。

 地面から美味しい水を吸って。少ない光を浴びて。育っていく。

 育つたびに、大人に近づいた気がする。


 たまには、雨が降って、風に吹かれて、大変なこともある。


 でも、もっと楽しいことがあると知っているから。

 育って、育って、育って。


 もっと光を浴びて。夜の星星を見て。強い雨風も楽しんで。

 もっともっと、育って、育って、育って。


 遠くまで見えて、ご飯もたくさん食べて、嬉しいことがいっぱい。

 でも、大きすぎて、皆が窮屈そう。

 それでも、育って、育って、育って。


 雷に当たってすごく痛いけど、めげないよ。

 頑張って、育って、育って、育って。


 あんまり、楽しいことがなくなってきちゃった。

 皆も、僕の周りから減ってきちゃったし。

 もう、育たなくていいかな。

 やっぱり、育って、育って、育って。


 育ちたくないのに、育っちゃう。

 止めたくても、育って、育って、育って。


 ある日、地震が起きて立てる場所がなくなって。

 横になって倒れてく。

 久しぶりの景色。懐かしい場所。

 疲れちゃったから、もうおやすみ。


 ……その木は、皆を支えるものになるのでした。

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