「幼馴染でも許嫁でもライバルでもない学園のマドンナとラブコメする話」

@Soma1120

第1話

私立 十永(とえい)学園。

ここは中高一貫校としてエスカレーターで登ってくる生徒もいれば、

外部から試験を受けて入学してきた生徒もいる、いわばそこそこ偏差値の高いよくある学校だ。


今日は入学式。

新一年生たちが新しい環境に胸を膨らまし、それに応えるかのように正門前の桜が満開に咲き誇っている。


そんな中、2年のクラス替え表を見ていると、歓喜が溢れ出るような大声があたりに響いた。


「まじか!大司!!また同じクラスだぞ!!いやっほぉぉ!!」


「優也、新しい生活に胸を膨らませている新入生たちもいるんだ。

先輩らしくもうちょっとシャキッとしろ」


目の前で嬉しそうに飛び跳ねてる男は矢幡優也(やはた ゆうや)。

ロシア人の母から遺伝したサラサラの金髪ストレートヘアに高身長と

男なら誰しも嫉妬の渦に飲まれそうなくらいの顔が整っている。

羨ましくはないけど。


(え、あの人超かっこいい!!)

(綺麗な金髪、、彼女いるのかな、、)

(隣にいる人のせいで顔よく見えないじゃん!)


「・・・・・・」

断じて羨ましくなんかないぞ!!

ただ、少しだけ人生交換したいなと思っただけだ。


しかし、矢幡優也という男は只のイケメンと一味違うところがある。

「まじでうるせぇ・・貴重な大司との会話に水差してきやがって」


そう、なぜか俺にとてつもなく懐いているのだ。

むしろ俺ともう1人以外の男女には塩を顔面に塗りたくるような対応をしている。

それでも根強いファンが多いことには納得できないけど。


「優也いいから、教室ついたらいくらでも話せるだろ?早くいくぞ。」

「それもそうだ、早く教室行って1年間何するかスケジュール決めようぜ!」

「これから何が起きるかわからないドキドキを奪わないでくれ」


なぜ、ここまで懐かれたのかは1年生の夏にあった出来事によるところが大きい。

そうか、もうあれから半年以上も経つのか。

懐かしい気持ちを抱きながら、新しい下駄箱に靴を入れる。


(おい、、、あの人先輩か、、!?)

(美人すぎるだろ!もしかして噂のマドンナの一人か、、!?)


後ろがまたざわめいてきたことに気づき、ひとりでに振り返る。


「大司おっはよー!」


「おはよ、真白」


「久しぶりに大司と同じクラスになったね、可愛い幼馴染と一緒なんだからもっとよろこべよ〜?」


大野真白(おおの ましろ)。

少し紫がかった黒髪にふんわりとしたボブヘア。

透き通った白い肌に物語に出てくるお姫様みたいな顔立ち。

そして誰もが眩しくて目を閉じたくなるほどの優しく明るい性格。

幼稚園の頃からの仲だが、何年経ってもこの眩しさには慣れない。

そんな幼馴染の隣に立つことに抵抗がある俺をよそに真白が耳打ちしてきた。


「もしかしたらもう見てるかもしれないけど、千紘と姫花も同じクラスだったよ」


「そうだったのか、全然見てなかったから気づかなかった」


もちろん気づいている。

学園にいる3人のマドンナ達がどのクラスになったかなんて新入生以外の生徒は全員チェックしてるに決まっている。

でも、意識してるってバレたくないじゃん!

男の子だもん!


「そっか…でも、楽しいクラスになりそうだね!」

「おい」


後ろから異様な圧を感じた俺と真白はゆっくり後ろを振り向く。


「またてめぇか大野真白、いつも俺と大司の邪魔ばかりしやがって」


「邪魔って何よ矢幡、私は幼馴染の大司に挨拶してるだけじゃない」


「俺たちは今から1年間なにをしてどうやって過ごすかを緻密に計画すんだよ、お前に割く時間は1秒たりともねぇ」


「これから何が起きるかわからないドキドキを潰されそうになってるわね、大司かわいそうに」


「なんだと」

「なによ」


新学期早々吐きそうだ。

やだ、みんなそんな目で見ないで、、、

周りからの好奇の目に耐えられなくなった俺は仲裁に入ることにした。


「とりあえず話は後だ、お前らが下駄箱の前で言い合ってるから行列ができてる」


「ほんとだ、みんなごめんね〜!」

「ふん」


「とりあえず行くぞ」

「待って大司、そっちは1年生の教室。私たちもう2年生だよ?」


そうだった。

この4月から俺たちは2年生になったんだ。


「そうだったな、忘れてた。

そういえばクラスって何組だっけ?」


「2年E組よ!」 

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