鴎VI

ネ、その花束の綺麗だったこト! 私、あれ程美しいモノ貰ったの初めてだったノヨ。すうごく嬉しくって、彼に飛び付いたノ。花弁が顔を擽って、腕からは彼の体温がじんわりと移ってきて、彼の若い煙草の薫りと花の爽やかさが妙に喧嘩して、何とも言えない刺激だったワ。 脳ミソがぐぅるぐぅるしてきてネ、何にも考えられなくなったワ。彼と花と私と。それ以外世界になァンにもなかったンだかラ……。


花束を間に挟んで、私達の花弁も重なったワ………。潮風に揺られてうっすら染みて。心も、きっと何より深く重なっていたんダワ……。


随分と長い間外に居たノ。すっかり火照った身体を海に入って醒ましたワ。


潮が薄く皮フに染みて、彼がくれた愛に融け合って、フフフフ、そうネ、気持ちの良いものだったワ………。


彼、ネ、海に入ってから随分と冷えて仕舞った様で段々と………。


エエ、ネ、彼、冷たくなって仕舞った。


やぁネ、寝ないで頂戴。モ少しで話し終わるから。全部すっかり終わるから………。

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