鴎IV

あァん……もう、寝ないで頂戴ったら……。コレお飲みなすって。カーッとなって目が醒めるンだから……。サ、サ、サ………


それで、ネ、すっかり冷たくなった彼を私の胸に抱き込んだノ。 可笑しい程に熱い胸ヨ……。海でも醒まし切れなかった。寧ろずうっと熱くなった……。


熱烈なドレスに包み混んで、暫く暖めて居た。違う、ワ、彼に私の火照りを醒まして貰っていたのヨネ……。お陰で私もすっかり醒めて仕舞って……。違ウ、違ウ……、彼の幽かな温もりさえも私が奪って仕舞ったのかもヨ。


彼、ネ、紅い口唇で、私の足にキスしてヨ……。其からずうっと動かないノ。 私、もう、何も望まなかった。


私の茜いドレスに彼、すがり着いたままになッて。私の手には花束の短い冷たさだけが、これも朱くなッて指に沈ンで。ぬるい赤藻が脚を飾った。 私と彼だけ、飾り付けられたノ……。


しおらしく、細やかに祝福受けて。海カらノ。


彼ハ海に還った。海に、ネ。 鴎は蟹が好きなノヨ。海を航る鴎ハ……。ネ……。


ネェ、貴方。海にハ誰が居ると思われテ……?


そう、ヨ、鴎と蟹が居るノヨ……。


ネ、貴方。顔がすっかり赫く為ってヨ……。


う、フフ、フ、フフ、アハは、ハ、ハハ、ハアハは………。

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