鴎 Ⅱ

あのビイチのことよ。 フフ、ね、彼処には曰くがあるのよ。


アラァ、そんなに怯えなくったってぇ良いのよ。ちょいとばかし、馬鹿げていて、憐れなだけですもの……。美しくって、ゾクゾクしちゃう。きっと呪われているんだワ…………。


何ヨ、睨むことないでショウ? 折角の色男っぷりが台無しよ。オホホホホ…………。


お酒でも呑んで、そう気張らずに聞いて下されば良いのヨ………。ソーダをうんと入れたウヰスキーを作ってあげますからネ。


イヤぁね、そんなに見集めちゃってェ……。手元が狂ってしまうわヨ…………。ホホホホ……………。



サ、お飲みなすってね。ウンと沢山話しますから…。


そうね、先ずはコレから話そうかしら…。私があのビイチに行った日の事ヲネ。


こんな場所で働いているのですもの、色ついた花だって多いのよ。みいんな私をアノ手コノ手で誘うの。そこで、一人だけ私の眼を惹いた人があったノ。私、直ぐ見惚れちまってネ……。 私っから声を掛けるのは普段は止していたのに、モウ堪んなくなっちゃって、直ぐ近づいたのヨ。


そうしたら彼、私と一曲踊ってくれたわ。彼はネ、私を操り人形の様に遊ばせたワ。とっても器用で、それで紳士で、途中、西洋の姫様の様に抱えてくだすってね、そのまま空まで舞い上がって、ランプは眩く廻っていて……………。 アラァ、詰まらなかったかしら…?ごめんなさいネ………。 氷とチイズを持ってきてあげる。今夜中に全部語ってしまいたいから……………。 何故って……。野暮ヨ乙女の朝を覗こうナンテ……………。ホホ…フフフ……

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