Re:リフィクション
O
1,機械という存在
"奴ら"の本拠地である白銀の塔の中、青年は倒れた少女の身を抱き起こす。
背後から放たれた、荷電エネルギーを凝縮して生み出された弾丸。
それは少女の背中に当たり胸部を貫通した。
致命傷により身体の機能は停止、力なく倒れる。
「おね、がい...先に...逃げ、て...」
「駄目だ!俺たちは二人でここを抜け出す、約束しただろう!」
青年は持っていた布で止血を試みるが、血は止まらず赤い池が広がっていく。
こうしている間にも、奴らは後方から追いかけてくる。
ガチャガチャと鈍い金属の音が少しずつ大きくなっているのが分かる。
それでも、青年は諦めない。
感覚にしておよそ一年、二人はまるで道具のような扱いを受けた。
ようやく抜け出せるチャンスを掴み、監視の目を盗んで逃走した。
あと一階、階段を降りれば外が見える。
あと一歩のところで―――少女は倒れた。
「くそっ、こんなところで...諦めてたまるか」
止血を諦め、逃走が優先だと判断した青年は少女を担ぐ。
まだ慣れない金属の身体を必死に動かし、階段を降りる。
再び銃声が聞こえたということは、自分たちを射程圏内に捉えたのだろう。
それでも、青年は諦めない。
あとは眼前の扉をくぐるだけ。
振り返らずに大広間を横切り、曇天の空が見える扉に向かって走り続ける。
一年ぶりに見上げた、あの空の下へ―――
== == == == ==
「絶対に、逃がしはしない!」
ビルが並ぶ都心部で、赤髪の女性が剣を振るう。
彼女が両手で握っているのは、幼少期の誓いを形作ったもの。
刀身の薄い純白の剣。
高速で振るわれたそれは、彼女が狙っている機械を破壊しようとしていた。
人間の真似事をしたかのような、複雑に構築された機械。
頭部、胴体、手足が揃っていても、剝き出しの金属の塊によって一目で分かる。
この機械はヒトにとって敵であると。
「これで終わりだっ!」
逃げようとした機械に背後からとどめを刺す。
真横に振るった剣が機会を両断し、人間の心臓部にあたる位置に埋め込まれた核を断つ。
ゆっくりと遅く低くなっていく駆動音とともに機械はガシャンと音をたてて倒れた。
彼女は自身の持つ純白の剣を鞘に収めると、周囲で見守っていた人々が歓声を上げる。
「うおおおおおっ!流石ですクロニ様ー!」
「クロニ様、ありがとう!!」
クロニと呼ばれたその女性は、優しい黄金色の瞳を向け、小さく手を振ってそれに応える。
彼ら一般人でさえ、機械は命を狙う。
人命を守るためにも、クロニのような存在が欠かせない。
「クロニ様、鎮圧ご苦労様です!」
「ああ。あの"
「了解しました!」
一般人が近付きすぎないように警備していたクロニの部下数名が敬礼し、素早く行動に移る。
機体は歴史に残してはいけない負の遺産として焼却される。
こんな時代が語り継がれることのないよう、備品の一つも残さずに処分。
その任務を部下に任せ、クロニは一足先に本部へと帰還した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます