オムレツ

茶々

オムレツ

『オムレツつくってよ』


夜中25時。唐突に何を言い出すのかと思えばオムレツ。オムレツを25時に。ネットで見た悪戯の真似か、卵料理が食べた過ぎて眠れないのか。不思議に思いながらも作ってだした。


夜中に食べるからには、甘い後悔のヘビーな味付けがいいだろうと、卵を3つ、バターたっぷり、ケチャップも惜しみ無くかけた。


それを見ていたアイツの表情はどんなものだったろうか。


差し出した生まれたてのオムレツを、いやに丁寧に、高級フレンチかの様に食べだした。


『そんなに旨いか』 と聞けば、「うん」とだけ答えた。


そうか、そんなに旨いのか。言われて悪い気はしなかった。夜中に地味に面倒臭い、洗い物を増やした甲斐があったというわけだ。


そういえば、こいつに卵料理を作って食べさせたのはこれが初めてだっけと思い出した。


いくら勧めても一口も食べる素振りを見せなかったものだから、てっきり大嫌いなのかと思っていたが。


なぜ。なぜ。作る前に思い出さなかったのか。なぜ一言、卵嫌い?と聞かなかったのか。なぜ。なぜ。なぜ。私はコイツのことを知った気でいたのか、なぜ。


満足そうな後悔を眼の中に浮かべ息絶えている。コイツはもう、オムレツを食べない。

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オムレツ 茶々 @kanatorisenkou

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