メシア

Karura

第一章 逃亡 オモテ

第1話 話が通じない人ってチンパン以下だと思うの

 まだ梅雨の雨がしとしとと降るころ


「けんじぃ、わしはお前の道をさんざん否定してきたが」


 一人の老人がその乾いた唇動かし言葉を紡ぐ、まさに風前の灯火とはこのことを言うのだろう。


「じぃちゃん!?先生じぃちゃんが!!」


「お前はお前の道をゆけ」


「なんだよ!そんな最後みたいな、おいっ、おいって」


 この日少年は、初めて人間の死に立ち会った。


※※※


「ピピッピピッピピッピピッ」


 スマホからもはや不快感を感じるようになった音が流れる。


「ん~」


 スマホに手を伸ばしアラームを止め起きる。


「懐かしい、懐かしいなぁ……って遅刻だ!」


 現在時刻は8時、「芸能学校に行くために上京してきた」と言っても、家賃の関係上、学校から少し遠い位置に家がある。慌てるのも仕方がないことだ。


「やばいやばい」


 急いで着替えると、靴を履きドアを開ける。まだ梅雨の空気が残っているむわっとした風が頬を撫でる。今日は7月20日、大事なテストの日でもあると同時に……


「今日で最後だもんな」


 俺が死ぬ日だ


※※※


「死にかけた。」

「お前最近、ギリギリだなw」


 このすべての言葉の最後に「w」がついてそうなヤツの名前は長谷川裕也、俺のライバル「だった」やつだ


「今回のテスト、ほぼオーディションみたいだったなwこーう面接官が全員スーツでwいつものテストの時はTシャツのくせになwカーあのときセリフかすって……」


 俺はこいつが好きだ。決してBLとかではないがこの夢にひたむきな感じが


「いいなぁ」


と感じてしまう。


「どーした?お前最近変だぞw昔はクソ早く来てたテストも最近だとずっと遅刻ギリギリだしw」

「何でもないほら俺ら、そろそろ卒業だろ。進路とかで腹が痛くて」

「進路かーw」


 裕也は少し考えるそぶりを見せると


「俺は、役者になるぜ」


そう言い切った。俺はその姿に、、、


「ごめん。今日大事な用事があるんだった」

「おいっw」


 俺は背中を見せて逃げ出した。


※※※


「ふぅ」


 俺は公園のベンチに腰掛ける。いつもは家族連れで賑わっている公園だが


「さすがに平日の昼間っから来てる人はいないよな」

「よんだかい?」

「いたー」

「そんな棒読みなら驚かなくてもいいよ。ここに来たってことはまた何か悩みごとかい?」

「まぁそんなとこです」

「まぁ興味ないけど」

「ないんかい」


 この人は、、、よくわからない連絡先も知らなければ、名前すら知らない。わかっていることと言えば、いつも棒アイスを食べていることと、、、


「おっ今日も私は運がいい」


とてつもなく運がいいことだ。


「毎回当たり引いてますよね?何かコツとかないんですか?」

「うーん……物欲を消すことじゃない?」

「人間には到底無理じゃないですか」

「私は人間じゃなかったか」

 

 そんな他愛のない話をしていると。空が赤く色づいてきた。


「もう夕暮れか、時間がたつのは早いね」

「えっと」


 俺はポケットの中に入っている懐中時計を開けると。


「今は、8時ぐらいですね」

「我ながら6時間も良く会話が続いたなと自分のボキャブラリーには関心するよ」

「後半「暑いね」しか話てない気が……」

「でも話してはいただろう?」

「まぁそうですけど」

「……それで、悩み事は軽くなったかい?」

「いえ、あまり」

「明日もここに、いるからおいで、私は暇だからね」


 なんだかんだ憎めない人だ。


※※※


 じめっとした夜風が頬を撫でる。時間帯が変わってもこの季節はじめっとするらしい


「だめか」


 俺はポケットから懐中時計を取り出し見る。現在、時刻は午後11:40分、突然だかこれから俺は死ぬ。

 もしも俺の今日一日が映画のワンシーンだとするのなら、観客は何もわからず「なんだこの映画!?」と苛立ちを覚えるだろう。

 だってそうだ本人にすら「何もわからない」のだから。

 それでも今日で俺の人生を終わらせる。いや終わらせて見せる。そう思いフェンスに手を伸ばすと。


「ちょまてよ」

「ん?」


キム●ク……いや公園のお姉さんがいた。


「なに不法侵入してるんですか?ここは学校ですよ」

「なーに非行少年がいたから注意しに来ただけよ」

「いや、何も罪を犯してはいませんので……」

「殺人罪、自分を殺そうとしている」

「ごもっとも」

「なにやってんの?」

「自殺を……」

「それを聞いてるんじゃない」


 なぜ名前も知らない他人に詰められないといけないのだろうか。


「悩みについて興味ないって言ってましたよね?」

「……事情が変わった」

「というか、このままいくと俺、死ぬので不法侵入と自殺関与の疑いでダブル役満ですよ」

「高校生なのによく知ってるね」


 お姉さんは関心すると近づいてきた。


「それでさっき事情って言ったよね?」

「言いましたね」

「君、死ぬって言ったよね?」

「言いましたね」

「バイトやるって言ったよね?」

「言ってもないし、聞いてもないです」


 何言ってんだこいつ?


「俺今から死ぬんですよ」

「うん」

「オレ イマカラ シヌ」

「片言で言っても返事は変わらないよ」


 話が通じねぇ……


「……君にはやってほしいことがあるんだ。そう君にしか頼めないことがね」


「君にしか頼めない」これを言われたのはいつぶりだろうか。なんなら小学生が最後ではないのではないのだろうか。


「わかった。受けましょう」

「……あぁわかった。ここじゃ危ないから安全なところへ移動しようか」

「主に、お姉さんがつかまりますからね」

「……そうだね」




あとがき

作者に文才はない!(断言)

主人公チョロすぎですよね……まぁこれも何か意味があったりなかったり……

ここまで読んでくれてありがとうございます。











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