第18話 魔封じの石が効かないだと…… 勇者ヴァイス視点

【勇者ヴァイス視点】


「ど、どうしてだ……? 魔封じの石を使ったのに……」


 ここは学園の中央グラウンド。

 ブライラントの勝利に大騒ぎになる学園生たち。

 

「ブライラント、すげえ強えじゃん」

「ヤバすぎるだろ」

「カッコいいですー♡」


 こんなイベントはなかった。

 俺が書いたシナリオにはない。

 オウガ・デューク・ブライラントは、ただ勇者に殺されるだけの存在。

 純粋なざまぁされる悪役キャラ、プレイヤーをスカッとさせるだけの存在。

 そして、何より弱いキャラ。

 ちゃんとレベルを上げなくても、簡単に倒せる敵キャラのはず……


 (なのに、なのに、なのに……)


 俺の計画はこうだった——

 ブライラントの魔力を魔封じの石で封じる。

 これでヤツは【魔力無効】を発動できなくなり、グラスに一方的にボコられる。

 グラスに負けたことで、生徒会の仕事に失敗したブライラントは、生徒会をクビになる……

  

 (そういうシナリオだったのに……)


「ブライラントが生徒会入りかー」

「あたし応援してますっ!」

「さすが生徒会メンバーだ」


 こないだまで学園生たちは、ブライラントの生徒会入りに反対していた。

 いや、クラウス王子との決闘に勝ったことで、生徒会入りに賛成する学園生も、ほんの少しだけいた。

 だが、今は、学園生のほとんどがブライラントの生徒会入りに賛成している。


「ブライラントが生徒会入りにするなんて……あ、あり得ない。絶対にあり得ない!」


 まるでアンチの書いた二次創作を見ているようだ。

 もしも噛ませ犬の悪役、ブライラントが生徒会に入ったらどうなるだろうか——

 勇者の養分でしかないブライラントを、メインヒロインたちと絡ませたらどうなるだろうか——

 ここは、タチの悪い妄想を抱いたヤツが書いた、二次創作の世界なのでは……?


「ねえねえ、今から生徒会室行こうよ!」

「うん! ブライラント様に会いたい♡」


 モブ令嬢二人の声がする。

 二人ともブライラントのファンらしい。


「ブライラント様ってイケメンよねー」

「あたしもそう思う! ブライラント様大好き♡」


 ブライラント様大好き——その言葉に、俺はブチキレた。

 絶対に許さねえ……


「おい。そこのモブ令嬢二匹……」

「「えっ?」」

「オラァ!」

「「ギャア……っ!」」


 俺は素早くモブ令嬢たちに、顔面パンチを叩き込む。

 モブ令嬢たちは、グラウンドに転がる。


「痛い……!」

「鼻が折れた……っ!」


 神を冒涜した罰だ。

 苦しめ、モブどもが!


「いったいどうした?!」


 人が近くに集まってくる——

 めんどうだ。逃げるか。

 俺はサッと学園生の群れの中に消えた。


「俺はこの世界の神なのに……っ!」



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