第15話 氷の姫騎士は爆乳

「はい! 新しい生徒会メンバーになりました、オウガ・フォン・ブライラント公爵令息です!」


 次の日の生徒会室。

 俺は生徒会メンバーに紹介される。

 生徒会メンバーは4人。

 副会長のアークライト・マギノビオ公爵令息、会計のシャーロット・ベケット伯爵令嬢、そして――攻略対象で「氷の姫騎士」の異名がある、書記のエステル・べアハルト。

 4人は俺をじっと見ている。

 どうやら歓迎されていないらしい……

 俺は評判最悪の悪徳領主。

 生徒会メンバーにふさしくないと思われているようだ。


「ふん……わたしは認めないわ。生徒会に悪徳領主が入るなんて」


 桃色の髪と、とび色の瞳は吸い込まれそうなほどキレイだ。

 そしてこのゲームの製作者の性癖なのか、エステルも巨乳……

 いや、巨乳どころではない。爆乳と言っていい。

 あのおっぱいで主人公ヴァイスはいろいろしてもらって――ヤバい。あの発達しすぎた双丘を見ると想像してしまう。


「ブライラントさん、何ですか? さっきからわたしをジロジロ見て……?」


 キっと、俺を睨みつけるエステル。


「いや、何でもないです」

「あらあら。ブライラント様はエステルちゃんの胸を見てたんですよー」


 ファルネーゼが微笑を浮かべながら言う。

 おいおい……そんなこと言えば大変なことに。


「へ、変態……っ! や、やはり悪徳領主は生徒会にふさわしくありませんっ!」


 顔を赤くして怒る。

 ていうかファルネーゼ、どうしてあんなこと言ったんだ?

 これじゃあエステルの好感度が爆下がりだろう。


「ふふ。エステルちゃんかわいいわ。ところで、ブライラント様とエステルちゃんにお願いがあるんだけど……」

「何ですか……?」


 ニコニコと柔らかく笑うファルネーゼだが、嫌な予感がする。

 かなりめんどうなことを押し付けられそうだ。


「実は……魔導士部と剣士部が今揉めているの。どっちがグラウンドを使うかでね。だからブライラント様とエステルちゃんには、生徒会として仲裁に行ってほしい」

「……わかりました。生徒会書記として、役割を果たしてきます」


 エステルは立ち上がって、生徒会室を出て行った。

 これは完全に自分一人で解決するつもりだな。

 俺みたいな悪徳領主の手は、借りなくていいってことか。


「ごめんなさいね。エステルちゃんは一人で解決しようとしているけど、エステルちゃんは交渉事が苦手だから……フォローお願いします。ブライラント様」


 ファルネーゼが俺に頭を下げる。

 そうか。一緒に仕事をしてもらうことで、エステルと仲良くなるきっかけを作ってくれたんだ。

 俺がエステルの苦手のことを上手くフォローできれば、エステルの好感度も上がって、俺も生徒会に馴染めるようになると……

 プライドが高くて真面目なエステルのことだから、実際に俺が助けてやることでしか、きっと俺を認めないだろう。

 さすが生徒会長、人間の心理をよくわかっている。


「わかりました。なんとかやってみます」

「ふふ。ありがとう。期待してるわ。ブライラント様」


 ★


 学園の空き教室。

 ここで魔導士部と剣士部の話し合いがもたれていた。


「このグラウンドは、魔導士部が先に予約していたんだっ!」

「こっちは大事な試合があるんだよ! 使わせてくれよ!」


 セプテリオン魔法学園には、前世の学校でいう部活がある。

 主に男子学園生が入る戦闘系の部活と、女子学園生が入る文化系の部活があった。

 それで、魔導士部と剣士部は前世でいうサッカー部と野球部みたいもので、戦闘系の部活の中では花形だ。

 当然、優秀な上級貴族で、戦闘に自信のある学園生が所属している。


「双方、冷静になって話し合いなさい」


 ……と、エステルが澄ました顔で言うが、双方ともまったく話を聞かない。

 お互いにぎゃあぎゃあと勝手なことを言い合うだけで、仲裁役の話を聞く気は全然ないようだ。

 これじゃあ収集がつかないな……


「わ、わたしの聞きなさい……っ! お互いに冷静に……」


 エステルが少し大きな声を出すが、魔導士部にも剣士部にも届かない。

 このままでは、上手く仲裁できない……

 

「く……っ! だ、誰もわたしの話を聞かない。ど、どうすれば……?」


 冷静に正論を述べているだけでは、こいつらは説得できない。

 ならば、こうするしかない――


 バン……っ!!


 俺は雷魔法を空に打ち上げる。


 魔導士部も剣士部も、驚いて俺のほうを見る。


「はいはい。みなさん、俺の話を聞いて――」

「なんだ? お前は? 悪徳領主のブライラントじゃねえか! 誰がお前なんかの話を聞くか!」


 魔導士部の部長、グラス伯爵令息を叫ぶ。


「そうだ! 誰が貴様のような薄汚い悪徳領主の話を聞くか!」


 剣士部の部長、アスクル公爵令息も同調する。


 うん。やっぱりな。俺の話なんか聞く気はない。

 ゲームのシナリオだと、なぜかヴァイスの話はみんな聞くことで解決するのだが、やっぱり俺みたいな悪徳領主の話は聞くわけないか……


「悪徳領主、さっさとここから出ていけ。出て行かないと、切り捨てるぞ!」


 アスクルが、剣の柄を握りしめる。

 かなり好戦的だな。さすが剣士部の部長と言ったところか。

 だが、これはチャンスだ。


「それは俺と、決闘したいということか?」

「決闘だと……? ああ、そうだ。貴様のような悪徳領主に口を出されたくないからな。決闘だっ!」

「ならば、俺も悪徳領主と決闘をしよう。悪徳領主に魔導士部を汚されるのは許せないからな」


 グラスとアスクルは、俺に決闘を申し込む。 

 魔導士部も剣士部も、冒険者出身の貴族が多い。

 子どもの頃から、戦いで物事を解決してきた……そんな設定があった。

 それなら決闘で脳筋男子たちと実力でわからせていけばいい。

 

「ブライラント、わたしも剣士だ。剣士部の決闘はわたしが受ける!」


 ずっと座っていたエステルが、立ち上がる。

 エステルは「氷の姫騎士」と呼ばれるほど、剣の腕が立つ。

 だから剣士の脳筋野郎は、エステルに任せよう。


 

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