第13話 主人公の代わりに生徒会に入ってしまう

「お待ちしておりました。ブライラント様」


 ここは学園の生徒会室。

 俺はファルネーゼにお茶会に呼ばれて来た。

 生徒会室はかなり豪華な部屋で、高級な絨毯とテーブルがあった。


「ありがとうございます。……あれ? 他の生徒会メンバーは?」

「今日はわたしとセリシアだけです。じっくりブライラント様とお話をしたくて」

 

 ファルネーゼの隣には、セリシアと呼ばれたメイドさんが隣に立っている。

 銀髪に赤い眼で、かなりかわいい……

 そして、胸はもちろん大きい。

 このゲームはデフォルトで女性キャラは巨乳だ。


「実は、ブライラント様に生徒会に入ってほしいのです」

「俺が……ですか?」

「はい! ぜひブライラント様に生徒会メンバーになってほしいのです!」


 ファルネーゼは、ニコッと柔らかい笑みを浮かべる。

 セプテリオン魔法学園生徒会——

 所属メンバーは、将来の国王側近候補。

 卒業後は出世が約束されている。

 もちろん生徒会メンバーになれるのは、貴族として品行方正で、成績優秀な学園生だけ。

 悪徳領主として評判最悪な俺が、生徒会メンバーになるのはいろいろ問題がありそうだ。


「ありがたい話なんですが、俺は生徒会メンバーには向いてないですよ」

「……ブライラント様の評判は聞いてきます。たしか自分のお父さまを追放されたとか」

「はは……知っていたんですね」

「ですが、自分のお父さまを追放したのは、自分の領地を悪政から開放するが目的だったのでしょう?」


 あのクズ親父を追放しなければ、ブライラント公爵領はヤバかっただろう。

 

「まあそうですね……」

「そして、平民のフィン・スラッグに領主を譲りましたね」

「たしかに譲りました」

「……素晴らしいですっ!」


 ガタッとファルネーゼは立ち上がった。

 俺の席まで近づいてきて、俺の手を握る。

 おいおい。素晴らしいってどういうことだ?


「え、あの……?」

「あえて平民の気持ちがわかるフィンに領主をさせることで、領民にとって最善の経営をしようとした、そういうことでしょう?」

「え、まあ……そういう見方もできるかも……」


 ファルネーゼは目を輝せる。

 単にめんどくさいから領主を譲っただけなのだが……?


「領民のために領主の地位を譲る……なんて領民想いの貴族なのでしょう……っ!」

「いや、そういうわけじゃ——」

「さらに、ブライラント様はこんなこともしてます」


 セリシアさんが、テーブルの上に資料を置く。


「……ブライラント様は、魔法通信で毎日、フィンさんに指示を送っています。領地の農業、モンスターの討伐、隣の領地との外交……フィンさんの領地経営をきっちりサポートしています」

「フィンは平民でわからないこともあるから、最初はサポートしないといけないと思って……」


 何のサポートもせずに仕事を任せれば、任されたほうは困るだろう。

 前世のブラック企業での経験から、ちゃんと任せた後のサポートをしようと思った。


「短い時間で、これだけの量の指示を送るなんて……やっぱりブライラント様は、生徒会メンバーにふさわしいですね」

「いや、普通のことをしただけで……」


 ファルネーゼはぎゅうっと強く手を握る。

 顔はニコニコしているが、Noとは言わせない空気だ。

 ここで生徒会に睨まれると、俺の平穏な学園生活はかなり危うくなる。


「わかりました。俺で良ければ……」

「ありがとうございますっ! すっごく嬉しいっ!」


 ファルネーゼが俺を抱きしめた。

 柔らかくて大きなものが、顔にたゆんっと当たる。

 ヤバい。やっぱりすげえでけえな……


 本来なら主人公のヴァイスが生徒会に入るはずだった。

 マジで大丈夫かな?

 悪徳領主の俺が入ってしまって——



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