第一章 乱世を取り巻く歪な世柄
第一話 護衛
第二次戦国時代の異名を取る混沌の時代。
かつては
平和を愛する劉円に
しかし、
天下人――劉円一族が何者かの凶行によって暗殺されてしまったのだ。
倒幕を
腕に自信のある者は猫も
殺し屋の暗躍により、名を揚げることは死に直結した。台頭する
こうして、世の勢力は
そんな血で血を洗う
要人の護衛を
その無双たる力に、人々は
《
◇
誰もが殺し屋の
日輪の南端に位置する深い
播宗は農業にほとんどの人員を注いでおり、国防を
それでも
人間は誰しも、睡眠という生理現象には抗えない。無防備を
現われた殺し屋は、
しかし現代に
だが殺し屋にとっても、当然ながら
忍はあらゆる忍術を駆使して、目標を討つべく城内を駆け回った。播宗の家臣は忍の動きを
あわや大惨事であったが、来襲した忍は床に倒れて気絶している。ある者の働きによって、領主を手に掛けられる前に忍を打ち倒すことができたのだ。
荒れ果てた寝室の中で、領主の田鍋は打ち震えている。
「また刺客……。もう、こんな生活は
泣き言を呟く田鍋の
肌と瞳を除けば全身が黒一色。まるで夜のような装束に身を
「お主が播宗の領主である以上、避けては通れぬことだ。
忍を討った少女は一言の苦言を放ち、脇差の刀身を腰の鞘に納めた。
その刀身に返り血はない。
腰まで掛かる少女の
「さぁ、その忍の者にとどめを刺してくれ」
田鍋の要求に対して、黒髪の少女は首を横に振った。
「……何度も言うが、わしは殺生をせぬ。こ奴は領外の茂みにでも放り投げておくが、それでよいな?」
少女がそう告げると、田鍋は壁に拳を突きつけて声を荒らげた。
「あなたが刺客を殺さないから私は狙われ続けるのだ! 修羅狩りと契約をしているというのに命を狙われるなんておかしいだろう!」
怒気が込められた田鍋の異論を聞き、黒髪の少女は頭を掻いて
「わしの遣り方が気に食わぬと言うのなら、他の者にでも護衛を頼めばよかろう。わしは主義を変えぬ。……それから、わしとの契約も残すところ後一週間だ。どうする? 延長はやめておくか?」
「そ、それは……」
田鍋は頭を抱えて返答に困っていた。だが選択肢はないも同然である。
「……あなたの手腕を信用している。だが、契約のことは考えさせてくれ」
「承知した。もしよければ、わしの知る
思いがけない提案を聞き、田鍋は少女の肩を勢いよく掴んだ。
「――ほ、本当か!? お願いする! 早速、明日にでも会わせてくれ!」
先ほどまでの
田鍋の即答には一切の迷いがみられず、少女の心は少し傷付いていた。
「決断が早い……もうわしと契約を延長する気はないようだのう。もっと悩んでから決めてくれてもよいのではないか……? わしが嫌いになったのか……?」
少女の
少女の名は――
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