42 王子様との内緒話 04
クリフさんが私の手を離してくれたので、私も手を下ろします。
「ところで
私たちくらいの年齢になると、貴族たちの間では政略結婚の話が出るものだそうです。私のことはともかくとして、お兄様のことをクリフさんが気にするのも当然でしょう。ライラ殿下はお兄様と結ばれることを望んでいるのですから。クリフさんもそれを応援しているようですしね。
「具体的な話はないはずですが、お兄様と私が婚姻することはあるかもしれません」
「……は?」
クリフさんは
「お兄様は養子で、私とは血縁的にはいとこなのです。ですが養子のお兄様がワイズ伯爵家の次期当主ということに不満を持つ臣下もいるようです」
「ああ、そういうことか」
「ええ。そこでお父様の実の娘である私とお兄様が婚姻すれば、ワイズ伯爵家の内部的には問題はなくなると」
クリフさんも納得したようです。貴族社会のお家事情というものもいろいろとあるのです。平民は平民でそれぞれの事情があるのでしょうけどね。
「君はそうなってもいいのかい?」
「……お兄様となら私も幸せになれると思うのです」
私は恥ずかしくて視線を下げますが、頬が赤く染まっているのを自分でも感じます。その私を見て、クリフさんが見惚れたような顔をしていたのが、視線を上げた私の視界に映りました。
「ですが私は兄妹という立場を利用して、競争もせずにライラ殿下やパトリシア先輩からお兄様を奪いたくはありません。お兄様が私を選ぶと言うなら喜んで受け入れるでしょうけど……」
これが私の本心です。どうも私は重度のブラコンであるということが否定できません。ですが兄妹という立場を利用してライラ殿下たちからお兄様を奪うのも気が引けます。お兄様があの方たちを選ぶなら、私もそれをおとなしく受け入れるつもりです。
「これは……私も姉上もとんでもないライバルがいるようだね……」
クリフさんがつぶやきました。私たち兄妹それぞれがクリフさん姉弟のある意味でのライバルということも、事実なのかもしれません。その上で私は競いもせずにお兄様から身を引く気にもなれないのです。私自身、お兄様に恋心を感じ初めているのですから。
クリフさんが真剣な表情をしました。
「でも私が君を
「それはそうなのですが……」
なぜクリフさんは私にここまでこだわるのでしょう。私はそれに値する女の子とは思えないのですが。
私に対する
クリフさんが不意に
「まあでも私と君との関係については、君は私自身を見てくれる。私は君の力になる。当面はこれで十分だ」
「はい」
「そしてもし私と君が恋仲になるなら、それはその時考えればいい」
「はい。そうですね」
そのクリフさんの言葉は私もすんなりと受け入れられました。この方と私が愛し合うようになる可能性もゼロではないのでしょう。この方は私などよりよほど素晴らしい人を
私はお兄様に恋心を感じ始めているでしょう。ですがそれはまだライラ殿下たちほど明確なものではないのでしょう。たとえお兄様が私とは違う人を選ぶとしても、それでお兄様が幸せになれるならと、素直に祝福できると思います。
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