20 食堂にて 03
ディスキン先輩が真剣な顔をしました。
「君たちは素質と能力に恵まれているのだろう。だが軽率に決闘を申し出るのは感心できない。下劣な連中にも力がある奴らもいるのだから」
「はい……私も軽率だったと思います……反省します……」
「私もです……貴族様と決闘したとなれば、たとえ勝てても平民の私はどうなったかわからないですし……」
「理解しているならいい。今後は注意するべきだ」
「はい……ご忠告ありがとうございます」
「ありがとうございます……」
ディスキン先輩もいい人のようです。こんな忠告を言うのはお兄様たちに任せてもよかったはずなのですから。
ですが私も本当に反省しないといけません。あの時は頭に血が上ってしまったのですが、大賢者を目指す私はあの程度で感情的になってはいけないのでしょう。
「何かトラブルに巻き込まれそうになったら、自分では対応できそうになかったらすぐにオリヴァーを頼れ。あの男は君たちにとっては頼りになるだろう」
「はい!」
ですがこの人にも認められているお兄様も私が思っていた以上にすごい人なのでしょうね。私にとっては優しくて人がいいお兄様なのですが。
ディスキン先輩がコニーを見ます。
「そしてアシュビー」
「は、はい」
「君の素質も驚くべきもののようだが、それ
「はい……」
「君はできるだけエマと一緒にいる方がいい。オリヴァーの妹であるエマにちょっかいを出す者はそうはいないだろう」
「は、はい」
「私もコニーを守ってあげたいです。私自身、お兄様たちに守られる立場なのですが」
「エマさん……ありがとうございます」
ディスキン先輩の言葉はおそらく正しいのでしょう。先程の私がお兄様の妹と聞いた時のフリント先輩たちの顔には恐怖の感情が浮かんでいました。そしてコニーが下劣な人たちの嫉妬を買うのも、おそらくは確定した未来なのでしょう。
ディスキン先輩が私に視線を戻しました。
「そして未来の話になるが、エマ」
「はい」
「メレディス・フリントは二年になる。私とオリヴァーが学院を卒業しても、奴らはまだいる。その前にも裏で画策するかもしれんがな。下劣な連中はその品性にふさわしい
「はい」
「君たちもそれまでに奴らのような低劣な連中は軽くあしらえるようになっておけ。エマなら心配はいらなさそうだがな」
「ご忠告ありがとうございます」
「ありがとうございます」
この忠告も心に留めておかないといけません。フリント先輩は根に持っているかもしれません。そして私はあのような人たちを軽くあしらえるようにならないといけません。
ディスキン先輩がまた笑みを浮かべました。
「ふふふ……素直なものだ。オリヴァーの妹とも思えん」
「? お兄様はいい人ですが」
「表向きはな。だがあいつは大賢者を目指せる男だ。そう単純な男ではない」
お兄様には私の知らない面もあるのでしょうか。
でもお兄様も大賢者を目指せる人だと評価されていることは誇らしいです。お兄様自身は大賢者を目指すのは私に任せて、自分はワイズ伯爵家の次期当主として活動すると言っていたのですけどね。お父様はお兄様の方が大賢者に近いかもしれないとも言っていましたが。
コニーがおずおずと切り出します。
「あの……ディスキン先輩。私自身をディスキン先輩に認めていただくには、どうすればいいでしょうか?」
「能力と実績を示せ。そうすれば私も君を認めよう」
「はい!」
コニーもディスキン先輩にも認められたくなったのでしょう。コニーは力強く返事をしました。ですがそれは並大抵のことではないでしょう。
「では、私はこれくらいにしておこう。君たちとの対話も楽しみにしている」
「助けていただいてありがとうございました」
「ありがとうございました」
そう言ってディスキン先輩は元いた場所に歩き去って行きます。ですが先輩は君と言うのではなく、君たちと言いました。
見送った私はコニーと向かい合います。コニーの目には力強い光があります。
「コニー」
「はい。エマさん」
「お兄様もディスキン先輩もまだ私たちを認めているわけではないでしょう」
「はい。オリヴァー先輩もディスキン先輩もエマさんと私を守ってあげているという意識だと思います」
コニーも気づいていたようです。私たちはお兄様たちにとってまだ
「コニー。一緒に高めあって、お兄様たちに認めてもらえる人になりましょう」
「はい、エマさん!」
私には大賢者になるということ以外にも身近な目標ができました。ですがそれも決して容易なことではないのでしょう。
そしてコニーは私の友達になるだけではなく、ライバルにもなってくれる子なのかもしれません。先程のこの子の魔力を見てそう思いました。この子の素質は私と同等か、もしかしたら上回るかもしれません。この子とはお互いに高め合っていけるのではないかと思うのです。
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