15 訓練場にて 02

 私たちが観戦しているうちにも訓練は続いています。その動きはきれいで、あこがれを感じてしまいます。私は魔法使い科に入ろうと考えているのですが、余裕があれば近接戦闘訓練もしてもいいかもしれないと思うくらいに。


 そして訓練は終わりのようです。お互いに剣を引き、剣をかかげて礼を示したようです。無効化結界も解除されました。観戦していた人たちが拍手をします。お兄様と私とコニーも拍手します。あれは賞賛するに値する戦いでした。

 訓練をしていた女の人が周囲を見渡します。そして私たち、というかお兄様に気づいたようです。



「あら。オリヴァー。その子たちは?」


「やあ。パトリシア。ロニー。君たちも今日戻ったようだね。こちらの子は私の妹のエマ。こちらはエマの友達になってくれたコニー。新入生に学院の案内をしていてね」


「ああ、その子があなたの自慢の妹ね。そろそろ新入生も入寮を始める頃ね」


「こんにちは。オリヴァー君。みなにも新入生の案内をしてあげるように言っておかないといけませんね」


「ああ。ディスキン先輩とトビーたちには言ったんだけど、君たちにも頼むよ」


「わかったわ」



 お兄様は私のことを自慢の妹と言っているようで、少し恥ずかしいです。お兄様にそう言ってもらえるのはうれしいのですけどね。

 この人たちも観戦していた人たちもお兄様に好意的なようです。新入生の面倒を見るように頼まれても嫌な顔は見せていません。お兄様は図書館に入れなくて困っている新入生がいたら連れて行ってあげるようにも頼んでいますね。



「自己紹介しましょうか。私は騎士科三年になるパトリシア・ニューランズ。パトリシアでいいわよ」


「私は騎士科三年になるロニー・ストレイスです。私はパトリシアお嬢様のニューランズ家にお仕えする家系の出でして。私もロニーでいいですよ」



 そして私たちはお互いに自己紹介します。

 訓練をしていた女の人がパトリシア・ニューランズ先輩。凜々りりしい感じの人ですが、気さくな人のように思えます。ニューランズという姓には覚えがありますね。

 パトリシア先輩の相手をしていた男の人はロニー・ストレイス先輩。礼儀正しくて穏やかな印象を受けます。先程の訓練での戦いぶりはすごいものでしたが。

 お二人とも私は初対面ですね。お二人はコニーに対する態度も変化はなく、人道派の人だそうです。

 コニーがおどおどしながらも声を出します。



「あの……パトリシア先輩はあのニューランズ将軍とご関係なさっているのですか?」


「私はそのニューランズ将軍の娘。次女だから気楽な立場なのだけどね」



 やはりニューランズ将軍の家の人でしたか。ニューランズ将軍と言えば王国でも名をせている方で、未熟者の私もその名前を知っているほどなのです。コニーが気にしている理由はわかりませんが。



「私の魔法の先生はニューランズ将軍に魔法使いとしてお仕えしていたらしくて……テレンス・ベックリー先生と言うんですが……」


「ベックリー? ベックリー導師のことかしら?」


「ベックリー導師は五年ほど前に引退して故郷に帰ったはずですが。コンスタンス君はベックリー導師の私塾に通ってたのですか?」


「はい。先生にはとてもお世話になりまして。先生は子供たちに読み書きや計算を教えているのですけど、私のように魔法の素質がある子には魔法も教えてくれるんです」


「なるほど。ベックリー導師はお堅い人という思い出があるのだけど、引退した今も王国のために働いてくれているのね」


「そうですね。あの方は平民出身のはずですが、敬意に値する方だったはずです」


「はい。尊敬する先生です」



 パトリシア先輩とロニー先輩はコニーの先生のことも知っているようです。ニューランズ将軍のもとで導師と呼ばれていて、しかもパトリシア先輩とも面識があるようだということは、その先生はとても優秀な魔法使いだったのでしょう。それほどの導師ならば引退しても優雅な暮らしをできそうなものですが、故郷に帰って子供たちの教育をしているとは、その先生は立派な人なのでしょうね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2024年9月28日 18:00 毎週 土曜日 18:00

転生少女は大賢者を目指す ~貴族の娘として転生した私は、名を残すために頑張ります~ 伊勢屋新十郎 @sinjuroiseya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ