ゼロ魔力剣士と契約剣
駄犬
第1話 出会い
世界を高速で横断する魔動力列車は、次の目的地であるアテマ王国を目指していた。
この魔動力列車は、主要大国でしか停車しない為、乗客は長期の車内滞在が余儀なくされる。
前方両車は乗客が宿泊する施設と、後方両車には国同士で売買される荷物が積み込まれており、観光列車兼、貨物列車となっている。
車内はゴージャスな造りになっており、レストランや宿舎、さまざな施設が揃っていた。
それに準じ乗客達も富裕層ばかりで高貴な服を着飾っている人達で溢れている。
そんな富裕層達に紛れ、この列車には似つかわしくない青年が1人。
服は汚れ、顔には擦り傷があり、腰には古びた打刀を差していた。
明らかに場違いな田舎者といった風貌である。
その青年の名はアルス。
彼は他の乗客達からの白い視線も気にする事なく、右手に握りしめたチケットを頼りに部屋を探す。
そのチケットには207号室と書かれており、アルスは部屋番号を一つずつ確認しながら、マホガニー木目調の綺麗な廊下歩く。
「あった。207号室」
アルスはドアの上に記載された部屋番号と、チケットに書かれてある部屋番号を交互に確認した。
アルスはドアノブに手を掛け、ドアを押し開ける。
すると中には寝間着に着替えようとして柄のついたズボンを履く、アルスと同じくらいの年齢の月白色の長髪に、可愛らしい容姿をした女性が居た。
「えっ?」
「えっ?」
お互い目を合わせ、そんな筈がないと言ったような間抜けな声を漏らした。
そして直ぐに女性が悲鳴を上げる。
アルスは慌てて廊下に戻り、ドアの上に書かれた部屋番号を再び確認する。
「待て!俺のチケットには207号室って——」
必死になって弁明するアルス。
すると、女性の部屋の片隅に置いてあった白銀の剣が眩く発光した。
その剣は瞬く間に赤髪の女性の姿となり、光の速さでアルスにタックルし突き飛ばした。
赤髪の女性は倒れ込んだアルスに、間髪入れず馬乗りする。
そして赤髪の女性の右手に光が集まり、部屋の片隅にあった白銀の剣と同じ剣が生成された。
その赤髪の女性はアルスに向かって、躊躇なく剣を振る。
「待って!クラルテ!殺しちゃダメ!」
白銀の剣はアルスの首元ギリギリで止められる。
赤髪の女性をクラルテと呼び、彼女の剣を止めたのは、先程まで寝間着に着替えていた月白髪の女性だ。
「何故止める。コイツはお前のその姿を見てしまった。生かしておく訳にはいかない」
クラルテは立ち上がり、冷たい声を発した。
「私は大丈夫だから。部屋に戻ってて」
右手に握られた白銀の剣は、光の粒子となって消えていき、赤髪の女性は鼻を鳴らして部屋へと戻った。
「ごめんね。少し待ってて」
そう言って月白髪の女性も部屋に戻り、数秒後直ぐにまたドアが開く。
そこに姿を現したのは、金色の短い髪に中性的な見た目をした可愛いらしい男性だったが、着ていた服は先程の月白色の髪をした女性の、柄のついたパジャマであった。
アルスは状況が理解できず、倒れたまま呆然としていた。
寝間着姿の男性はアルスの前へ座り、落ちたチケットを拾う。
「さっきはごめんね。確かに君の持ってるチケットは207号室であってるみたいだね。それに状況が理解出来てないみたいだし、兎に角部屋においで」
男性はアルスの手を取り、部屋に招き入れた。
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