第11話 懐かしい夢を見た
**前書き**
今回から、より読みやすく書き方を変えました。
*******
「俺はみんなに幸せになってほしいんだよ。」
魔力ランプに照らされた空間の中で晩酌中、ひげ面でガタイのいい漢『アストライオ』が夢を語ってきた。
「もう何回も聞いたよ、それ。その夢を叶えるために今日まで頑張ってきたんだから、今日は早めに休んだほうがいいんじゃない?」
そう言って私は木彫りのカップに入ったワインに口を付ける。
「むしろ明日が正念場だからこそお前とは話したかったんだよ、エルル。エンディの野郎は偵察で後3時間は帰ってこないし、ルゥに夜更かしさせるのは忍びないだろ。何より、最近こうやって娘と面と向かって話す機会なかったしな。」
そう言ってガハハと豪快に笑うアストライオ。
面と向かって照れくさい事を言われた恥ずかしさと、こういう大切なときに会話相手として選んでくれた嬉しさからつい顔を赤らめてしまった。
「なんだ、顔が赤いぞ?酔いが回ってきたんじゃないか?」
そう言ってまたアストライオは豪快に笑い飛ばす。
私の気持ちには気づかれていないみたい。
(まったく、鈍感だなぁ・・・。)
でも、鈍感でいてくれた方がいい。
私の気持ちは決してアストライオに悟られてはいけないから。
「まだ酔ってるって程ではないよ。そういうアストライオこそ回ってきてるんじゃない?笑い上戸みたいになってるよ。」
「バカ言え!これは素だ!」
そう言ってまた笑う。
それにつられて私も笑う。
(こんな時間が永遠と続けばいいのに・・・。)
私たちは到達者だから、永遠と歳をとることはないけど、戦争で命を落とした仲間は少なくない。
だからこそアストライオの理想、"豊かで国民が笑っていられる国"を作るために、私達は明日、帝国に戦争を仕掛ける。
兵士も国民も殺してはいけない。殺すのは力と権力で独裁政治を敷く皇帝のみ。
(他の人に恐怖の目で見られるのは嫌だけど・・・、私は好きな
そう再度、ひっそりと心に硬く誓って、私はアストライオとの晩酌を楽しんだ。
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「おはようございます。起きてください、エルル様。」
ルゥの声で目が覚める。
昨日の一件で、今後の身の振り方を考えている間に、寝てしまっていたみたい。
「あと5分寝てちゃダメ?」
宝物の抱き枕にしがみつきながらおねだりしてみる。
「駄目です。本日も学院があるのですから。」
「だよねぇ・・・。」
正直、久しぶりにエンディと喧嘩したせいであまり学院に行く気になれない。
でも、転入早々休むのは今後の関係構築的によくないと思う。
私は抱き枕を抱えたまま体を起こした。
「おはよう、ルゥ。」
「はい、おはようございます、エルル様。抱き枕、お預かりいたしますね。」
うん。と返事をして抱き枕を渡す。
その流れでベッドから降りるた私は、ルゥによって手早く制服に着替えさせられた。
その後、朝の支度を終えて食堂に向かうと、そこにはすでに朝食の準備が整えられていた。
「「いただきます。」」
同時に席について、手を合わせる。
今日の朝食はコーンスープとベーコンエッグ、トーストだ。
「昨日は止めてくれてありがとうね、ルゥ。」
しばらく食べ進めてから口を開く。
「お気になさらなくて大丈夫ですよ。エンディミール様も、エルル様がお怒りになられるのを覚悟したうえでお話しになられたのでしょうし。」
そう言ってルゥは微笑んでくれたが、ルゥは基本、私に対して強く反論してくることはない。
そんなルゥが昨日はああして強く反論してきたのだから、昨日の私は相当ひどかったんだと思う。
(後でエンディにもまた謝らないといけないな・・・。)
分かったと返事をしてからは、何か話題があるわけでもなく、二人とも黙々と朝食を食べ進めるのだった。
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