乙女ゲームは悪役令嬢を生かしておかない

@miri-li

悪役令嬢に転生してしまいました

『リリーに、どうしようもなく惹かれたんだ。君への愛を…』


きゃー!ミシェル様!愛してます。乙女ゲームの攻略対象ミシェル王子。キリッとした目元、艶やかな金髪、服の上からでも分かる鍛え抜かれた筋肉。本当に私のタイプだ。そして私は彼のハートを射止めるために奮闘中なのだ。


『ミシェル様、何を唆されているのですか。こんな下世話な人間に割いている時間はございません』


もう!またコイツか。ムカつく。

コイツは悪役令嬢プリシラ。幾度となく私とミシェル様の仲を邪魔してくるのだ。しかもゲーム製作陣のお気に入りなのか、全ての攻略ルートに登場する働き者。この顔も見飽きた。



ゲームに夢中になりながら、二段ベッドの上をゴロゴロ――至福の時間だ。



…あ、落ちる。


頭に岩が当たった様な衝撃が来た。

打ち付けられた視界に鋭利な岩が映る。こんなのあったっけ。


血で床が染まっていくのが見えた。指でなぞる。生ぬるくさらさらだ。 


死ぬ?


だが痛みは感じない。意識が遠のいて行く中で、この期に及んでミシェル様のことを考えていた。



◇◇◇◇◇



意識を取り戻すと眼前に美少年がいた。間違いない、何度も見たこの顔――


「あなたは、幼き日のミシェル様!?」


「え、えっと、僕の名前はミシェルですけど…」


成る程、これは走馬灯だ。


死ぬ前にミシェル様を拝めてラッキー。って私死ぬのか?


「…それで、受けていただけますか?プリシラ様」


「は、はい?」


ミシェル様は笑みを浮かべた。一生守りたいこの笑顔!


それから私は、暫くミシェル様のお顔を見つめっぱなしだったと思う。


「ではまた後日改めてご挨拶に伺いますね」


「はい?」


言ってしまって後悔した。

もう終わり?もっとミシェル様を拝みたいんですけど!?  

 

立ち去ろうとするミシェル様を引き留めようとすると…後ろから走ってきた誰かに抱え込まれた。


「おめでとう!」


綺麗だがキツめの顔を近づけられ困惑する。コシのある髪の毛に頬を撫でられ擽ったい。


「……誰ですか?」 


「何を言ってるの?あなたのお姉様に決まっているじゃないの!」  


いや本当に誰?  


「もしかして喜びのあまり頭が混乱しているのかしら。大丈夫?あなたプリシラ・マ……」


――プリシラ、プリシラ?

あ、【悪役令嬢プリシラ】!


何でその名を?


訳が分からず辺りを見渡すと、窓に映っていた顔は――正に悪役令嬢プリシラ。


間違いない。悪役令嬢特有の鋭い目つきのこの顔は、プリシラだ。



そんな馬鹿な。顔をベタベタ触り確認する。窓に映る少女も同様に顔を触っている。




 〝―――悪役令嬢に転生してしまった!?―――〟






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