第12話
シスコンにゃんこがギルドセンターでベルにゃんこと話をしていたころ、村の外れにある農場では、二人の少女がゴールドフードの苗の世話をしていた。その少女たちは、ベルにゃんこの言葉通り、元貴族、いや、もっとビッグな存在であった。彼女たちは今、農場で救難信号を出して迎えを待っている状態だった。
彼女たちは村に来るまでの出来事を思い返しながら、黙々と作業をしていた。
「ううっ・・・こんなことになるなんて・・・うわーーーん!!」ふんわりにゃんこが、手を止めて苗を見つめながら呟き、マジ泣きしていた。
「うむ」
姫にゃんこは無表情で冷静に頷いたが、自分の大好きなゴールドフードの苗だからこそ、無表情でいつも動かない彼女が珍しく動いていた。普段は絶対に動かぬ。絶体にだ!!
「こんなことなら、宇宙船のペーパードライバー卒業コースをケチらずに申し込めばよかったよぉ・・・」
「うむ」
姫にゃんこはいつも通りの無表情で短く応じる。
「あの宇宙船、すっごく高かったですよね。・・・お給料が・・・なくならないですよね…?」
「・・・・・・」
姫にゃんこは無言になり、ふんわりにゃんこに一瞬視線を合わせたが、すぐにそらした。
「そんな~・・・」
ふんわりにゃんこは肩を落として嘆いた。
『ああああ、なにやってくれやがったんですか、まじ、ドン引きなんですけど!!』
遠いにゃんこ帝国で怒り心頭のドン引きにゃんこの声が聞こえたような気がした。
それは、ほんの数日前のことだった。ふんわりにゃんことペタにゃんこは、ゴールドフード探索任務のために、にゃんこ帝国から未開惑星サクラヴェールへ向かった。そして、ふんわりにゃんこはワープモードに切り替え、あとは自動操縦に任せることにした。ペーパードライバーのふんわりにゃんこでも離陸とワープと自動操縦モードぐらいはできるのだ。できないのは着陸時の手動操縦モードを行うときぐらいだろう。
「ペタにゃんこちゃん、少し休憩しようか?」
ふんわりにゃんこはそう言いながら、フルヘルムを外した。隣にいたペタにゃんこも、フルヘルムをはずした。しかし、ふと隣を見ると、そこにいたのはペタにゃんこではなく、姫にゃんこだった。
「え、ええええええ!? なんで姫様がここに!? ぺ、ぺ、ペタにゃんこちゃんはどこ? ええええええ!!」
ふんわりにゃんこは驚きの声を上げた。彼女の顔には困惑が広がっていた。
姫にゃんこは無表情のままふんわりにゃんこを見つめ、静かに答えた。
「うむ」
「えええええ、えええええ、えええええ!!」
ふんわりにゃんこは戸惑い、いや、言葉になっていなかった。
ワープが終わり、宇宙船は目的地に到着する。次のステップは着陸作業に入ることだった。ここからは手動での操作に切り替えなければならない。ペーパードライバーのふんわりにゃんこにとって、この瞬間が最大の試練となった。彼女の手は汗で滑りそうになり、緊張感が全身に走った。
「よし、ここからは私の出番だね・・・でも、えーと、まずは・・・このレバーだったかな?」
「うむ」
姫にゃんこは適当に返事をした。
ふんわりにゃんこは必死に思い出しながら、操作パネルに手を伸ばす。頭の中には教習所で習った手順がよぎるが、記憶が曖昧で不安が募るばかりだった。指先は震え、心臓は早鐘のように打ち続ける。
「えっと・・・次は・・・これかな? いや、違うかも・・・」
ふんわりにゃんこは戸惑い、何度も確認しながら操作を試みる。しかし、次の瞬間、彼女の目の前に警告ランプが点滅し、警報が鳴り響き始めた。
「え、えええ!? 何これ!? どうしよう、姫様! 制御が効かないよ!」
「うむ」
姫にゃんこは無表情のまま答えたが、状況を把握していない。実に冷静というか、何も考えていなかった。
ふんわりにゃんこはパニックになりながらも、必死に操作を続けるが、状況は悪化する一方だった。コントロールを失った宇宙船は急速に下降し始め、ふんわりにゃんこの必死の操作もむなしく、機体はどんどん地表へと向かっていく。
「いやぁぁぁ! ちょ、ちょっと待って、止まって、お願い!」
叫び声を上げるふんわりにゃんこ。しかし、宇宙船は彼女の祈りを聞き入れることなく、地表に激突した。衝撃音と共に、機体が大破し、二人は魔の深い森へと投げ出されることになった。
姫にゃんことふんわりにゃんこは無事だったものの、宇宙船は大破。二人は魔の森を彷徨うことになり、救難信号を送ったあと、受信機や装備を一通りリュックにいれて猫里を訪れることにした。
「なんか不気味な森ですね、はぁ~どうしよう・・・」
ふんわりにゃんこはとんでもなく落ち込んだ。ふと、隣りを見ると姫にゃんこがいなくなっていた。
「あれ、姫様は? ひめさまぁ~!! どこですか。これまさか、ゴールドフードの苗・・・?」
「うん?」
姫にゃんこが突然、光のような速さで隣に現れた。まるで瞬間移動したかのようだ。
「あれ、姫さま。いつの間に、どこに行っていたんですか?」
「うむ、おにごっこ」姫にゃんこは無表情にそういった。
「そうなんですかぁ。救助がくるまで、ゴールドフード捜索をしますけど姫さまはどうしますか。うーん、なにか価値のあるアイテムとか売れるものがないかな。宇宙船の弁償とかさせられたら、たいへんだよぉ」
「ゴールドフード探す、キリッ!!」
姫にゃんこはキリッとポーズを決めた。手にはどこからか手に入れた縄のようなものをブンブンまわしていた。
数日間の彷徨いの末、二人はようやく農場に辿り着き、ベルにゃんこに助けられたのだった。
姫にゃんこはゆるさない!! にゃんこノベル @oken39
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