後悔するとやり直せる能力を使ってたら三角関係になってた
こーぼーさつき
一章『幼馴染と喧嘩』
0周目
プロローグ
五月十日。放課後。
「バーカッ! アホ! ドジ! マヌケ! エロ! 変態! 役たたず!」
私は
「はぁ? 急に怒って、なに? 私、もものそういうところ本当に嫌い」
「あーっ、嫌いって言った。今嫌いって言った」
「言ったけど? それがどうしたの。そういう怒りっぽい人はみんな嫌いでしょ。ふつーに考えてさ。わからない?」
「普通普通普通って! そもそも普通は人の好きな事馬鹿にしたりしないの! わかる?」
「はぁ……めんどくさ。良いじゃん。わけわかんないんだし」
「だ か ら ! そういうことじゃないの」
「なに? じゃあどういうこと?」
「わけわからないのは良いの。別に。人の勝手だし。わかんないのにわかれ! って言うほど横暴じゃない。わかんないのはしょうがないじゃん」
グッと拳を握る。歯を噛み締める。
「でも、馬鹿にするのは違うじゃん。私はファーストってインディーズバンドが好きなの。好きなものをさ、馬鹿にしないでよ」
「ももってずーっと、そうだよね。本当に面倒。ちっちゃいころから高校生なった今でもなお。本当にずっと」
軽蔑混じりの視線を送ってくる。
「は? 面倒じゃない」
「面倒でしょ。自覚してない時点でかなり面倒」
「面倒面倒……ってさ。もういいよ。そんな風に思ってたんなら私ともう関わらないでよ。嫌々仲良くされても気分悪いっ!」
「ふーん。じゃ、良いよ。絶交ね。もう金輪際話しかけてこないで」
ふんっと私はそっぽを向き、教室を後にする。
廊下の窓から差し込む夕日は眩しくて直視できず、背けるように俯きながらとぼとぼと歩く。
形容しがたい喪失感が私を襲った。
翌日。
登校する。
いつもは梨沙と一緒に居たのに、今日は一人ぼっち。
同じ教室にいる彼女は周囲の友達と仲睦まじげに会話している。なのに私は孤独。
「すぐに乗り換えるんだ……」
無意識のうちに声を漏らす。頬杖を突きながら、彼女のことを眺め、それを自覚して慌てて目を逸らす。とはいえ、いつも彼女を目で追って、近くにいて、笑っていた。だからこう一人の時はどうすれば良いのかわからない。手持ち無沙汰だっな。
目線をどこにおけば良いのかも、一人の時になにをすれば良いのかも、どういう顔をすれば良いのかも。なにもかもがわからない。
ふつふつと心臓が熱くなり、締め付けるように苦しくなる。
とりあえず机に伏せてみる。
そうすると煮えそうだった心臓は穏やかになる。
深々としたため息を机に向かって吐き出す。
私にとって藤田梨沙という幼馴染の存在がどれほどに大きいものであったかを今更ながら理解する。いつも近くにいる。私の傍に居てくれる。私の傍で笑ってくれる。私にとってそれが「当たり前」であった。なんてことのない日常であった。だから気付かなかった。それが当たり前で、日常で、なんてことのない普通のことだと思っていたから。とても特別で捨ててはならない大きなものであることに。
一方で彼女にとっての私というのはそこらにいる友達の一人でしかなかった。強いて言えば友達の期間が長いだけ。それ以外は特別なことはなにもない。だから捨てることを厭わない。捨てたあとも他の友達で空いた隙間を埋めることができる。彼女にとって私とは代わりがいくらでもいる一種の駒ということだ。
「この感情は……なに?」
見たことも感じたこともない感情に苛まれる。
悩み、苦しむ。
ちらっと楽しそうにしている彼女を見る。そうするともやもやしている不思議な感情は飛び跳ねるように大きくなり、脈打つ。そして希死念慮に襲われる。死んじゃいたい。と思う。苦しいから? 辛いから? 悲しいから? 恥ずかしいから? 自問自答しても答えは出てこない。そもそも自問自答して答えが導き出せるのであれば、こうやってうじうじすることもない。
わかんない、わかんないけど。でも……一つだけわかった。
「……あぁ、私って今、猛烈に後悔してるんだ」
なにに、どこに、どれに、後悔しているのかはわからない。でも、後悔している……という事実だけは理解できた。
その瞬間、一筋の光が見えた。暗闇の中に線が入った。
そして猛烈な痛みが頭を襲う。こめかみをしめつけられるような。頭蓋骨にヒビが入ったような。頭の色んな箇所が色々な種類の痛みを発する。
痛すぎて、意識が、飛びそう。
◆◇◆◇◆◇
目が覚める。煩わしいスマートフォンの目覚ましを止める
寝ぼけたまま、スマホを触り始める。
画面に表示されている日付が明らかにおかしく、私は動きを止める。それから慌てて目を擦る。でもやっぱりおかしい。寝ぼけているから、というわけじゃない。
「なんで?」
考え込む。
考え込んだところで表示されている日付に変化はない。
『四月九日』
と、表示されている。
「時間が巻き戻った、とか? まさかぁ……ねぇ。そんなはずないよ。ファンタジー世界じゃあるまいし」
恐る恐る、カーテンをあけ、窓の外を眺める。
家の裏に見える山は緑色ではなく、ピンク色に染まっていた。
どうやら私は過去に戻ってきてしまったらしい。
うわーっ! なんだこれ! 私になにをしろって言うんだ。
◆◇◆◇◆◇あとがき◆◇◆◇◆◇
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