第1話 猿沢池

 JR奈良駅から奈良公園へまっすぐに伸びる道は、三条通りと呼ばれています。東西南北で言うと、西から東に真っ直ぐ通っている通りになります。三条通りの名前は、かつて奈良にあった都・平城京の『三条大路』に由来しています。大きな通りですが、車の通行量はそんなに多くありません。


 さて、その三条通りですが・・JR奈良駅から奈良公園までは登り道になっています。しかし、緩やかな登りなので、歩くのに苦労はしません。いつも、多くの日本人や外国人観光客が小さい子どもたちを連れて、JR奈良駅から奈良公園までぞろぞろと歩いているのです。


 そうして、JR奈良駅から20分ほど三条通を歩くと、奈良公園の西の端に到達します。そこにあるのが猿沢池です。猿沢池の横には興福寺があります。


 猿沢池は周囲360メートルの小さな池です。もとは、興福寺の放生池ほうじょうちだったと言われています。放生池というのは、捕らえた魚類などを放してやるために設けられた池のことです。国宝である興福寺の五重塔が猿沢池の水面に映る姿は、古都奈良を代表する風景として有名ですね。


 猿沢池は秋がいいと言われます。確かに、錦秋を背景にして興福寺五重塔やその隣の興福寺南円堂が水面に映る姿は、大げさな表現を許していただくと、この世のものではないような荘厳さを見せるときがあります。


 しかし、残念なことに、令和5年から13年まで興福寺の五重塔の大規模な補修工事が行なわれており、今は五重塔を見ることが出来ません。


 そこで、補修工事が始まる前、今から2年前の秋に僕が撮った写真を近況ノートに載せますよ。


 あっ、ここで、皆さまから声が聞こえます。


 「2年前と言うと・・アホバカ作家は白血病で長期入院していたはずでしょ。2年前の秋にどうして、アホバカ作家が奈良に行って写真を撮れるのよ」


 はい、もっともな疑問ですね。。


 それはですね。当時、僕は1ケ月入院しては2~3週間ほど退院し、また2ケ月ほど入院するということを計画的に繰り返していました。で、医師からはこの退院の時期には、極力、体力の回復に努めてくれと言われていたのです。それで、入院の間の退院の時期に、体力維持の運動を兼ねてアホバカ妻と一緒に奈良に旅行したことがあったというわけです。


 さてさて、そんなわけで撮った写真がこちらです。今日の近況ノートです

 https://kakuyomu.jp/users/azuki-takuan/news/16818093081796267546

 

 ①は、猿沢池に写る興福寺の五重塔と南円堂です。写真の右端に見えているのが国宝の五重塔ですね。で、左端に見えているのが南円堂です。猿沢池が、これらの建物と周りの紅葉した木々をまるで鏡のように映しています。


 ②の写真は南円堂を撮ったものです。真ん中に見えているのが南円堂です。その左の白い建物はホテルです。南円堂は、興福寺境内の南側に位置する八角形のお堂です。ネットを見ると、弘仁4年(813年)に、藤原冬嗣ふじわらのふゆつぐが父の内麻呂うちまろのために建立したそうです。現在のお堂は江戸時代の再建で、西国三十三カ所観音霊場第9番札所になっています。


 次の③番は国宝である興福寺の五重塔です。塔の右側にホテルが2つ並んでいるのが見えます。ホテルの部屋の窓ガラスが陽光に光っていますね。


 ④は、五重塔と南円堂の中間あたりの紅葉と、それを映す猿沢池です。


 ⑤~⑦は、猿沢池の水面だけを写真に撮ったものです。つまり、水面に映った、逆さになった景色というわけですね。⑤は紅葉、⑥は五重塔、⑦が南円堂です。水面のさざ波で、わずかに景色が揺らいでいるのがお分かりいただけると思います。


           (つづく)

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