二章第16話 ココア先生の話を聞こう!(3)

 「ソーマ君?おーい!」

 「は!」

 ココアが俺の名前を呼んで肩を揺らしていた。

 

 「ぼーっとしてたけど大丈夫?」

 「ん?嗚呼大丈夫…。ココアの料理が美味すぎて意識飛んでただけだから」

 「ええ?まぁそんな冗談言えるなら大丈夫かな?えっと私お皿にシチュー乗せるからソーマ君はそれをお盆で持って行ってリンちゃんとメルディちゃんに持って行ってよ」

 「OK」


 

 ◇



 ココアの指示でお盆を持っていくとテーブルには雑談するメルディとリン。そしてマスターもいた。

 「飯できましたよ」

 「お!待ってました」

 「お腹ぺこぺこ」


 取り敢えず先に待ってたであろう二人の前にシチューを置いていく。

 「ソーマきゅん♡やだぁ♡エプロンつけてるぅカーワーイーイー♡」

 「あ…マスター。いやぁ実はココアの手伝いで飯一緒に作ったんですよ」

 「そうなのぉ♡ハァハァご飯も作れるなんて♡ソーマきゅんお金幾らでも払うから私のために一生ご飯作ってくれる?」

 「それはちょっと…遠慮します」


 マスターが口を両手で押さえてハァハァと興奮していた。何か指の間から鼻血の赤が見えるが無視しよう。

 「マスターの分も持っていきますね」

 「はーい♡嗚呼理想のショタの料理食べれるなんて夢みたいだわ♡」

 「…頼むから俺をショタ扱いしないでくださいよ…そういうのは美少年系の男の子の方が似合いますから」


 平凡な中学生をショタ扱いするもんなのか?てっきり美形で俺より年下の小学生あたりの男の子を指すと思ってたのに…。

 「ソーマ。ショタの定義は色々ってマスターが言ってた」

 「あ…そう…」

 「リン。ほっぺについてるから」

 「む…ありがとうメルディ」


 リンがキメ顔風の無表情で告げるが頬についたシチューで台無しである。メルディお姉さんみたいだな…。

 「全く…アンタアタシより一応年上でしょ?」

 「年上とはいえ一歳しか違わない。でも私をお姉ちゃんだと思っていいよ」

 「…どこから突っ込めばいいのよ」

 あ…逆なんだ…。


 そうこう女の子たちの話す声をBGMにしてマスターの分もシチューを持っていくと後ろからココアが何やら切ったフランスパンみたいなのを持ってきた。

 「シチューだけだとお腹空くからパンも一緒にどうぞ」

 ココアがパンを渡すと特にリンが目を輝かせて頬張りハムスターみたいにもぐもぐしている。

 体小さいけどよく入るなぁ。


 「ソーマ君も食べて食べて」

 「お。サンキュー」

 俺も取り敢えず座りココアに勧められて飯を食うことにした。するとリンがゴソゴソと荷物から何かを取り出して渡してきた。

 

 「これお土産の毒ガエルゼリー。ココアのもある」

 リンが出したのはカップに入った紫のゼリーである。カップの形は熊?いや毒ガエルって言ってたしカエル型かな?中にはよくみるとマスカットの粒みたいなのが入ってる。


 「わぁ。ありがとうリンちゃん」

 「サンキューな」

 『ふむ…ソーマの土産はワシへの土産でもあるからの。感心じゃな』

 ココアとスピカも喜んでいる様だ。開けて食べてるとシンプルに葡萄味だ。普通にうまい。

 リンはドヤ顔になり、そんな様子をメルディは呆れた感じの笑顔で見ている。


 マスターの方をみると何か子供を見つめる親みたいな顔をしていた。その穏やかそうな顔を見てると何となく"女神の愛子アテナ・ファミリア"の女神はこの人で俺たち一般冒険者は女神にとって愛子なんだろうなとか考えてしまう。あながち間違ってないかも。


 

 ◇



 数時間後…

 辺りは暗くなりそろそろ解散となった。マスターからは去り際に

 「ソーマきゅん♡私とのデートの約束忘れたらダメだからね♡」

 「ほわ!」

 そう言ってマスターは俺を抱きしめる。


 『ふおぉ…ぷよぷよ…うぐぐ…』

 スピカも俺の感覚が伝わってるようである。何か悔しそうだけど仕方ない。これが現実なのだから。


 「ちょ…マスター!やめて下さい!」

 「…マスターソーマいじめるのダメ」

 「そ…ソーマ君に変なことしちゃダメですよ!」

 と他の女子三人に引き剥がされた。く…何か残念な気分だ。

 『…このむっつり小僧が』


 「あらあら残念。仕方ないわねぇ…ソーマきゅん♡ぜーったいデートしてねん♡」

 マスターはちゅっと投げキッスをして去っていく。


 「ふぅアタシたちも解散しますか」

 「…私も帰る。ソーマも帰ろう」

 リンが俺の手を引っ張る。

 「あのリンさん何で俺の手引っ張ってるの?」

 「ソーマうちに来て良いよ。私と暮らそう」

 「いやいや女の子と暮らすのよくないから!俺たちはあくまで主従関係だから!そ…それにほら!俺ココアを送んなきゃいけないから!」

 「え?!ソーマ君!?」


 すまんココア。リンさんの執着心とマイペースから逃げるにはこれしかないんだ。

 俺はココアの手を握り夜の街を駆け抜けた。



 ◇



 「ハァハァ…しっかしリンにも困ったもんだな」

 『全くじゃな。あの小娘自宅に狼を招き入れるとは…』

 「(狼って俺のこと!?しないよ?何もしない!)」


 ある程度離れてから深呼吸を繰り返す。なんか約一名失礼なこと言ってくるが俺は紳士なのでそんなことはしない。そう…なんたって紳士だから。

 「ココアごめんな?巻き込んで」

 「…それはその良いんだけど…手…」

 「へ?うわ!ごめん」

 ココアの手を握ってるの忘れてた。ココアの方は何かモジモジしてる。リンの場合は手を触っても特に何もないので何か新鮮だ。


 「…ソーマ君って恥ずかしいこと言っても気づかないのに身体的な接触苦手なんだ…」

 「俺はずいこと言った!?」

 『き…貴様まさか…"ぐへへ女子のパンツ見せろぉとか「(スピカさん?ちょっと黙ろうね?俺がんな事言う奴に見えるのかな?)」』


 スピカ一々五月蝿いなぁ。寝てた時のが良かったなぁ…。

 「これは完全に自覚なしだね。ううん何にも言ってないよ」

 「はぁびっくりさせるなよ」

 「ごめんごめん。それより何で私を連れて行ったの?」

 「ん?いやぁまぁ…偶々近くにいたのと…リンとメルディも心配だけど戦う手段あるから大丈夫かなぁ…って…」

 

 説明するとココアは少し残念そうな顔をしている何でんな顔するんだろ。

 「それよりココアの家って何処?」

 「すぐそこだよ?一緒にくる?」

 

 取り敢えずココアを送り届けるミッションをクリアするためについていくことにした。

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