第39話 意地悪協会職員の話する?

 会場から出ると俺の顔に白い何かがぶつかってきた。

 「ソーマきゅぅぅん♡かっこよかったわよん♡はいご褒美チュー♡」

 「ごは…」

 犯人はマスターだった。マスターの胸が思いっきり俺の顔面に押し付けられた上にマスターは俺から少し体を離して頬にキスしてきた。


 いい香りはするしキスされるしプルプルだしで俺の頭は混乱して鼻血が出てきた。

 『きも…』

 「(うう…)」

 

 「マスター自重してください。まぁしかしソーマよ。よくやった!流石私の弟子だ!」

 「へ…へへ…」

 「鼻が高い。ソーマかっこよかった」

 「そ…そう?」


 アシュリカやリンにも褒めちぎられる。やべぇめっちゃ嬉しい。可愛い女の子や綺麗なお姉様に褒められるとか興奮する。

 『(きっしょ…勘違いするなよ!?お主だけの力ではなく九割はワシの力じゃ!)』

 「(ほとんどじゃん!え…チート使ってないよな?)」

 『使ってないわ!使ってたら一瞬であの変態をミンチにできる!』


 つまりさっきのあれはマジで俺の実力って訳か!?俺めっちゃ強くなってるじゃん!

 と調子に乗ってると…


 「やぁシラヌイ君見てたよ?凄い試合だったね」

 副会長がニコニコしながら話しかけてきた。

 そしてその後ろに見慣れない青年が立っている。


 「…」

 青年は何も言わず俺の方を見つめてくる。

 

 見た目は青み掛かった黒髪をしていて、耳にはピアスをしている。顔立ちは涼しげで生真面目そうなキツい顔立ちながらも綺麗目な顔のイケメンだ。金縁の紺色のコートに黒い細身のズボン、そして黒いブーツでまとめている。

 

 「紹介するよ。彼は協会の職員の一人でね…ほら君も挨拶した前」

 「…ユーリ・ブルーハーツ」

 かなり無愛想な感じで名前だけいう青年。幾ら何でも少し冷たくないか。


 「…俺はソーマ・シラヌイです。よろしくお願いします」

 「そんなの知っている。しかしこんなヘナチョコゾンビが勝つとはな…冒険者の質が落ちたのか?」

 ニヤニヤと嫌味っぽく笑うユーリに俺は更にイラついた。


 「初対面なのに失礼では?」

 「失礼?俺は真実を言ったまでだ。文句あんのか?」

 「文句しかありませんけど?」

 「へいへい。未来の実験動物はよく吠えるねぇ?」

 「んな!?マジでなんなんだよ!アンタ!さっきから失礼な!」

 「格下マスターに勝ったくらいで偉そうにしてんじゃねーよ。つーか明らかにお前ガキだろ?ガキの癖して年上にその言葉遣いの方が失礼じゃね?」


 やべぇ血管切れそう…。すると

 「辞めないかブルーハーツ君!すまないね。この子はいつも誰かに悪態をついてしまって…」

 「ちっ…」

 副会長に止められたユーリは舌打ちしてそのまま何も言わずに何処かへ行ってしまった。


 副会長もお辞儀してそのままついて行った。


 「なんなんだよ!あいつ!」

 「まあまあソーマ。落ち着きなさんな」

 「うむ。寧ろお前が怒るとあいつの思う壺だぞ」

 「けど!」

 納得がいかない。クレーム入れてやるか!。


 「ふぅ♡」

 「ひょわ!」

 とそんな決意をしていると耳がゾワゾワした。マスターに息を吹きかけられたのだ。


 「やぁぁん♡反応可愛い♡ソーマきゅん?もしまだお怒りならお姉ちゃんが落ち着かせてあげようか♡勿論か・ら・だで♡」

 そう言って俺を抱きしめるマスター。俺の中の本能と理性が戦い…厳しい戦いの末理性が勝った。


 「…わかりました。ここで終わりにします」

 「ええ…ざんねーん♡」

 「マスター…セクハラはお控え下さい」

 「はーい…ま!どっちみち約束通りデートしてもらうからね♡ソーマきゅん♡」

 

 そう言って俺にパチンとウインクするマスター。…年上のお姉様とのデートってドキドキしそうだけどこの人だとなんか怖いんだよなぁ…主に貞操的に…。


 「マスター…。お腹すいた…」

 「あらそう?それならそろそろギルドに戻りましょうか♡」

 リンがぐーとお腹を鳴らしている。因みに現在の時刻は15時。俺の世界と時間の読みは同じの様だ。

 そんなリンは試合前にカエル饅頭一箱食べている。こんな小さい体のどこに入るのだろうか…。


 マスターの提案で俺たちは一度ギルドに戻ることにした。



 ◇



 一方その頃

 -side副会長&ユーリ(※三人称視点)

 「副会長…あのゾンビ。普通のゾンビなんすかね?」

 「おや?気になるのかい?」

 「気になるっつーか…。そもそもあんな自我が強くて生意気なゾンビなんか見た事ねーっすよ」


 ユーリと副会長は今回決闘を行ったゾンビ少年ソーマについて議論していた。

 「…普通ではない事は確かだね…」

 「と言いますと?」

 「君は口が硬いからね…」

 「話し相手がいねーだけですけどね」


 副会長はカバンからファイルを取り出してそこからプリントを一枚取り出し、ユーリに渡した。

 「彼…ソーマ・シラヌイは異世界から来たらしい」

 「はぁ?異世界?そんなバカな事…」

 「私もそう思っていた。だが…少しタイミングがな…。ほら…例の国、カルディル王国で行われた"異世界転移実験"が行われた日付のその次の日にシラヌイ君の亡骸が発見された」


 副会長は真剣な顔でユーリに向き合う。

 「偶然にしては出来すぎている。それにソーマ・シラヌイという人物はこの世界の戸籍の全て調べても該当する者がいない。そもそもシラヌイというホームネームを持つ者が存在しない」

 「…」

 副会長の話しを静かに聞くユーリ。


 「兎も角…今後も我々は女神の愛子アテナ・ファミーユとの交流を図りソーマ・シラヌイの監視を行う。いいな?」

 「…うっす…」


 二人は一通り話し終えると協会本部へと戻って行った。

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