第14話 漆野圭7「いいわけ」
圭のいいわけ
「女学生としては、本屋さんの前に来るという事は、なんの問題もないと思うのよ。だって学業が全てであり、そのために女学生をしているわけだし」
「圭、それはね。本屋さんが開いて入ればの話だから。それに女学生って何よ、いつの時代の話をしているのよ。大正かって感じ」
あたしと砂羽は、閉店した本屋の前に来ている。
我ながら閉店した本屋の前に来て、何をしたいんだろう。
「ていうか、なんで砂羽もここにいるの?」
「自分でもよく分からない」
その時閉まっていたシャッターが開いた。
「あれ、圭ちゃん。どうしたの?」と中からおじさんが出てきた。
いたんだ、と思うと同時になぜ閉店した本屋の前にいたのか、という理由付けをしないといけないと思った。
「女学生の本分は勉学であり・・」あたしの言葉をおじさんが遮った。
「いいよ、訳の分からない、いいわけなんかしなくて。どうぞ、お茶でも入れるよ」
中に入ると全然片付いていない。
「おじさん、ぜんぜん片付いていないんだね」
「仕方ないさ、一人なんだから。それに本の中身が文芸物ばかりで」
「なんかおじさんもいいわけしている。なんで二人して言い訳」と砂羽が楽しそうに言う。
「そちらの子は」
「あっ、親友の砂羽」
「そうか。ここに沙智ちゃんもいたら、楽しいだろうにね」
「そうだね沙智がいたら。きっともう一人友達が出来て、喜んだだろうな」
「沙智ちゃんて、圭の詩の友達?」
「ヘー砂羽ちゃんは、沙智ちゃんの事知ってるんだ」
「ええ、圭からここに来るいいわけを散々聞かされましたから」
「あの時は楽しくて。嬉しいな、最後に詩の話を若い人と出来るなんて。本当は、圭ちゃんと沙智ちゃんが詩の話をしていた時、仲間に入りたかったんだけどね」
「なんで入ってこなかったんですか」と砂羽が言う。
「だって、こんなおじさんが入ったら、イヤがって帰っちゃうだろ」
「またおじさん、いいわけしている」
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