第11話 掛川由布子6「アンラッキー7」

「由布子」

「何、ママ」

「ちょっと寄りたいところがあるんだけれど」

「どこ」運転をしながら、私は助手席の母に尋ねる。

息子は後ろのチャイルドシートに拘束されていて、今はとってもおとなしい。

「スーパーの横に産直があるのよ」

「そんなのあったっけ」

「あったの」母と息子の三人で夕飯の買い出しに来た。

普段母は徒歩なんだけれど、今日は私が車を出した。

スーパーの駐車場に車を止めて、その隣の畑へと歩いて行く。

お兄さんが一人でやっている。

なぜか思ったほど野菜が並んでいない。

「ママ、ここは?」

「ここが見つけたところ、今日は何が?」

「今日は、ブロッコリーと小松菜ですね」

「じゃあ、それ」

「はい、じゃあ収穫してきますね。何なら、ご自分で収穫してくれても」

「えー、そんな産直があるの」と私は驚いた声をあげた。

「そうなのよ、驚きでしょう。頼んだ物を引き抜いて、売ってくれるの」

「確かにそれは新鮮かもしれないけれど」

「ぼく、野菜掘る?」

「うん」と息子は分かっているのか、いないのか、保育園なら先生から頭をなでられるレベルのお返事をする。

かくして息子は小松菜を収穫して、大満足で会計の所に来た。

横にオレンジなのか、ミカンなのか分からない物が置いてある。

「これは?」

「売り物ではないんですけれど、サービス品なのでどうぞ」

「一個貰っていいいの」

「いえ、一個と言わず。ラッキーセブンで7個どうぞ」

「わー、ママ貰おうよ。ばあばも」

そして7個貰って帰ってきた。

なんとラッキー7だ。

夕食の時母が

「これなんだと思う」と言ってきた。

「大きなオレンジ?」

「まあ良いわ食べましょう。公ちゃんもいらっしゃい」

そして母が包丁を使って、固めのかわを剥いた。

すると母が小さく悲鳴を上げる。

その中には大きめの虫が入っていた。

「これは、アンラッキー7だったね」と私

「でもママ、虫さんに取っては、ラッキー7だよね」と息子

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