2024年7月24日 足が、止まった。そして

野球観戦を楽しんだ次の日。


寝不足ながら、起きて会社に向かう。



歩き慣れた道。


いつもの横断歩道。


規則的な信号。


何も変わらない、いつもの日常。


いつものように歩いた。



頭の中で、


「お前が行っても迷惑をかけるだけ」

「お前は役立たず」

「何もできないくせに給料泥棒をするのか」


と響いた。


会社に向かう歩幅が少し小さくなった。



再び、


「「「お前が行っても迷惑をかける!」」」

「「「お前は役立たずだ!」」」

「「「何もできないくせに給料泥棒だ!」」」


と響いた。


足が、徐々に動かなくなった。



そして、


「あっ、私が会社に行っても、役に立たないんだった。」


小さな声でつぶやき、下を向いた。




その時。


『おはよう!どうしたの?暑い??』


ハッと上を向いた。


たまたま後ろを歩いていた、部署違いの、女性の先輩だった。


咄嗟に、

「おはようございます!」

と妙に明るくて元気な声で、言った。


自身の声の調子に、少し驚いた。



先輩は私に話しかけた後、私を追い抜いて前を歩いて行った。


前を歩きながら、後ろの私をチラチラ見ていた気がする。


私はいつものように歩いてみせた。



先輩がビルに入って見えなくなった瞬間、


私は軽い過呼吸を起こしながら、


回れ右をして、会社から逃げた。


逃げるように帰った。



「すいません、本日体調が悪く、お休みいたします。どうぞよろしくお願いいたします。」

会社用携帯で、お決まりの文章をグループリーダーに送った。

即レスが怖くて、すぐに携帯の電源を切った。



その日は、嫌なほど晴れていた。






























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