第14話 禁書事件 1/3

 この学校に潜入してから2週間。マシロのやらかしたことで教師から呼び出されたり、図書館で調べ物をしていると、生徒たちの噂話でこんな話を聞いた。


 それは寮のベットの下にいつの間にか本を置かれているという噂だ。しかもその本は禁書エリアに保管されているようなとても危険なものでその内容は誰もが口を閉ざすようなだという。一体だれが何のためにそんなことをしているのか……。それは謎に包まれている。


 俺はその話を聞いてマシロがまたやらかしたのではないかと思い、マシロにそのことを尋ねたが、やつは「なにそれ知らなーい。」と関心がなさそうに答えた。若干違和感を覚えつつも俺はそれ以上の追及はしなかった。


 時間が経つごとに噂はどんどん広まっていき、ついに学校全体で本の話題で持ちきりになった。そしてついに生徒全員が犯人探しをし始めたのだ。

 今も俺の目の前で生徒たちが喧嘩している。ご飯を食べている時に暴れないでほしい。


「だから俺はそんなの知らねえって言ってるだろうが!」

「うるせえ! だったら毎晩毎晩気持ち悪い声出しながらベットをガタガタ揺らしてるんじゃねえ! こちとらお前のせいで寝不足なんだよ!」


 話を聞いていると彼らは同じ部屋のルームメイトなのだろう。喧嘩はどんどんヒートアップしていく。


「はあ!? 俺はそんなことしてねえよ!」

「じゃあ、毎晩聞こえるあの声は何なんだよ! 気持ち悪い声出しやがってこの変態野郎が!」

「んだとコラァ!!」


 2人の生徒が取っ組み合いの喧嘩を始めた。周りの生徒たちは2人に罵声を浴びせたり、止めに入ったりしている。しかし、その騒ぎはどんどん大きくなっていくばかりだ。

 俺は彼らの喧嘩に巻き込まれないようにそそくさとその場から離れると、一人の鋭い声が響く。


「皆の者! 落ち着きたまえ!」


 その声の主は入学式の時に見た短髪で厳格で真面目そうな雰囲気の風紀委員の人だった。彼は一声でその場の喧嘩を収めると、この人は留学生寮の人ではないはずだ。何故こんなところにいるのだろう?


「時に君たち、阿部屋兄弟を知らないか?」

「ああ、そいつの弟の方は勝手にいなくなる時が多いですけど、兄の方はこの時間ならここで朝食をとっているはずです。」


 え!? この人たち俺に用事があったの!? もしかして禁書子に入ろうとしたことがバレた!? それともマシロのイタズラ止められなかったから怒られる!?


「いや、兄の方だけで大丈夫だ。流石に幼子にあのようなものは見せられないからな……。」


 な、なんだ。俺かマシロが何かやらかしたかと思ったよ……。でも幼子ってマシロのことだよな。俺はともかく、アイツ本当は二十歳なんだけど。まあ、そんなこと言われなきゃ分かんないよな……いや、アイツ本当に二十歳か? イタズラでやってることがクソガキの所業なんだけど。


 俺がもそもそと隠れるように朝食を食べていると、風紀委員がこちらにやってきた。


「君が阿部屋茂松君か?」

「アッ、ハイ。ソウデス……。」

「何故君は目を逸らすのだ?」


 風紀委員が俺の顔を覗き込んでくる。やめてくれ、ないとは思うけど変装してるのがバレそうで怖いんだよ。


「あの、貴方は……?」

「ん? ああ、入学式であの騒ぎがあったし、学年も寮も違うから君が面識もないのは仕方ない。改めて自己紹介をしよう。私は生徒会風紀委員のナタリエル・シャフリエラだ。」


 生徒会の中に風紀委員ってあるんだ。アニメとか漫画とかフィクションの世界では生徒会にかなり大きな権力があることが多いよな。実際はそんな権力なんかないけど。


「君にお願いしたいことがある。本日の授業が終わったら生徒会室まで来てくれないか? 他の生徒たちには聞かれたくない内密な話なんだ。」

「え、はい。わかりました……。」

「よろしく頼むぞ。」


 そう言って彼は立ち去って行った。え、あの人、わざわざ俺を放課後に呼び出すために留学生寮に来たの? 別に放課後に放送で俺を呼び出してもよくない?

 この学校、たしか中世ヨーロッパ風世界なのに放送室あるよな。なんつーガバガバ世界観だ。ちゃんと世界観整理して設定しろクソ女神。

 それでも、わざわざ直接来たってことは俺がバックレると思ったのか? 俺はそんなことしないんだけどなあ……。まあ、俺も相手のことは何も知らないからお互い様か。


 俺は頭の中でグルグルと考え事をしながら食事を食べていると、いつの間にか目の前にいたマシロが食堂の食べ物と飲み物を含めた全ての朝食のメニューをかき混ぜて食べていた。しかも俺より多く食ってる。

 コイツ食い方汚いな! そういやマシロ、人型昆虫捕まえて食おうとしたり、毒のある魚食べてもピンピンしてたけど、コイツ今までどんな食生活送ってきたんだよ。

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