第20話 ヤミの神様2
「……話は変わるんだけど……君は、神様って信じてる?」
「突然どうしたの?……うーん、
「………そうか。……でも『神様』っていう言葉にするから胡散臭くなるけど……『揺るがない善の概念』みたいなものならある気がしない?」
「揺るがない善なんかあるかなあ。そういうのって、その場の状況や時代とかによっても変わらない?何が良くて何が悪いのかって」
「でも、例えば……。道端に困っているお年寄りがいて、助けを求めてる。その人を助けるのは善?悪?」
「…………そう言われると、助けるのは『善』だけど……」
「だろ?それは、古今東西変わらない真理じゃないか?遥か昔から、人類はそういう行為を『善』だとみなしていたと思うよ」
彼女は顎に手を当てて考え込み、少しの空白の後、口を開く。
「……でもさ、1秒でも早く会わないと死ぬかもしれない家族が待ってるとする。その場合は、どっちが善?家族の元へ急ぐのと、困っている人を助けるのは」
頭を回転させて、僕の話に真剣に答えてくれる火置さん。適当な返事を返さずに、こんな話題にも引かずに会話してくれることに、僕は純粋な喜びを覚える。
「そういった究極の選択系の場合は、自分の信念に従って行動するのが善だと思う」
「………どういうこと?」
「たとえば、普段から何よりも家族を優先すると決めている……とか。そういう、その人の確固たる主義思想に、自らの意思で従うかどうかで判断する」
「……その場の流れで……みたいな選び方は善とみなさないってこと?」
「そう。君の言う通り、善い行いは時として判断が難しい。トロッコ問題然り。他人に判断を委ねず答えのない問題に立ち向かうのもまた、善なる人だと思う。そして、『神様』に近しい存在だと思う」
「その言い方だと……あなたは神様を信じてるんだ」
「うん。僕は僕の考える神様を信じてるんだ。10歳の頃からずっと」
「…………ヤミ教を開祖したってこと?」
「信者は一人だけどね」
「…………やっぱり、なかなかレベルの高いおかしな人だった」
彼女はこちらに向かってニヤリと笑う。その表情を見る限りでは、僕に対して嫌悪感は抱いていないように見える。……と、思う。
「そうだ、今日は僕の考える神様の話をしていい?今日も時間を潰さなくちゃいけないし、どうかな?」
「いいよ。好きなだけ話して」
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