一四時三二分
エツランシャの活動停止を確認。かの者は神谷修二の目の前で、灯火が寄る辺をなくすように、その姿形を赤黒い血痕と光の粒に分解し、空中に溶けていった。のちに鉄骨階段を降下してきた小向夜子、大西真由美、売春婦によって、神谷は負傷の応急処置を受ける。
動けない神谷に代わり、売春婦が自身の手首の付着した刀剣を舞台に持ち帰り、神像の右園死児を刺して回った。売春婦の敵対者懐柔能力のためか、それ以外の理由によってか、右園死児達は洗礼を施される信徒のように、静かに刃を受け入れた。
まどいの巨人の脳髄を刺すと、かなたの空に舞っていた飛ぶ脳髄が糸の切れた凧のように地に落ちていった。最も巨大な死児をつらぬくと、空中電波塔が周囲の建物と同程度に腐食した。羽田電次の標本を破壊すると、はるか眼下をうごめいていた変異体達が、その動きを止めた。
そして、最後に巨大な白骨遺体を刺すと、遺体と刀剣が蒸発し、同時に、見えない何かが消失した。たたずむ売春婦のそばに、やがて風が届き、青いゴム風船が飛来した。マジックペンで書かれた『がんばれ!』の文字が、売春婦の頬をかすめていく。
一四時三二分。空中電波塔の災害誘引力、消失。
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