戦況 〇六時五〇分
聖域手前五〇〇メートル地点で新たな敵に遭遇。つたない英語を叫びながら消音マシンガンで銃撃してくる二十名ほどの歩兵部隊。聖域周辺をスパイしていた外国勢力と思われる。金輪部隊の増加で脱出できなくなったらしい。しかし、彼らは明らかに外部からの情報支援を受けている。
大西真由美の歩く遺体を、敵部隊は攻撃しない。潜入チームの素性が知られている。彼らは我々の作戦目的を知っていて、妨害のために待ち伏せていたと思われる。エツランシャを守るために、あるいはこの国を滅ぼすために、情報を握る誰かが彼らに指令か依頼を送ったのだ。
おわりの巨人信徒も、トレーラーの進路上に集結していた。裏切り者、あるいは裏切り者達は、我々の潜入ルートや作戦開始時刻を敵性集団にリークすることでチームの壊滅を狙っている。誰が裏切り者か、特定しているひまは無い。これ以上邪魔が入る前に聖域内に突入しなければならない。
敵部隊は応戦射撃を開始したブラインドマン達に対し、ガスマスクを装着し始めた。毒ガスの使用を察知した神谷が、売春婦に三田倉九の解禁を要請。売春婦は三田倉九の拘束チェーンを外し、指示をささやいた。
三田倉九の移動速度は、おそらく大型肉食獣と同程度であると思われる。時速にして、およそ八〇キロメートル。彼は消音マシンガンの弾丸を受けながら数秒で敵部隊の潜む物陰に到達し、その習性に従い許可された限りの臓器を摘出した。やがて三田倉九が聖域に向かって走り出したため、売春婦は敵部隊の壊滅を宣言。チームは三田倉九を追う形で聖域へ向かった。
聖域まで、残り四〇〇メートル。
※重要なことではないが、壊滅した敵部隊の後方一〇メートル地点に装備の異なる軍人の死体があった。損壊の状態からかなりの私怨を買ったと思われる。
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