朝倉光雄(ブラインドクーガー)の贈り物

 聖域の災害誘引力(腐食効果)の影響下にあっても使用できる銃器を試作した。現在聖域周辺の金輪部隊が増加しているため、現地試験はできないが、理屈上は使用に堪えるはずだ。聖域潜入メンバーは事前に試射をしておいてくれ。射撃のコーチはその辺に、それこそ腐るほどいるはずだ。

 銃の名はシルバーコイン、口径七・六二ミリ、全長八四〇ミリ、重量二二〇〇グラム、装弾三〇発。いわゆるアサルトライフルだ。チタン合金等の抗腐食素材を使ってる。聖域の腐食効果の根本的な原理が分からんが、聖域適合者判別テストに使ったアルミ合金容器が腐食しなかったことから、同程度の素材でイケると踏んだ。

 射程距離は二五〇メートル。アルミニッケルの弾丸を四五〇発毎分の速さで発射する。最大の特徴は発射機構が完全なガス式ということだ。火薬は聖域内で腐るから、特殊混合した圧縮ガスを発射薬代わりに使ってる。だから厳密には、超高威力のガスガンだ。

 撃つと臭いし、すぐに銃身が熱くなる。一定以上温度が上がると安全装置が働いて、引き金がロックされる。だいたい二〇発連射したら一〇秒は冷やさなきゃダメだ。聖域以外じゃポンコツ扱いされる銃だな。弾丸は着弾後に花のように大きく開き、肉を引き裂く。間違っても味方を撃つな。一生恨まれるぞ。

 水には浸けるな。素材の性質上、抗腐食効果がなくなる。基本的には右園死児的戦力をすり抜けてくる敵を防ぐための、護身具だと思え。金輪部隊変異体や飛ぶ脳髄をこれだけで倒そうなんて思うなよ。自決にも使うな。失敗すると悲惨だ。

 欠点ばかり書き並べたが、設計者としては良い仕事をしたと思ってる。君らについて行くブラインドマンの装備もこれだ。火炎放射器やガス爆弾も作ろうかと思ったんだが、万が一腐食事故が起こった時に部隊が全滅するものはいかんと言われてね。

 自分は聖域には行けんが、これで十二分に貢献を果たしたと思う。あとは折り鶴でも折って待ってるから、朗報で応えてくれよ。戦友諸君。


 朝倉光雄

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