報告四六号 災害誘引聖域
報告案件 災害誘引聖域
報告者 空軍警戒管制機『銀影』
エツランシャの声明は金輪部隊に制圧されたメディア網、あるいは同部隊に賛同したメディア網により全国を駆け巡った。その結果、空中電波塔周辺数キロエリアの建造物、道路、生物が腐食または腐敗を始め、展開していた軍部隊と車両、航空機が全滅した。
右園死児の災害出力には少なくとも二パターンの形態がある。ひとつは単に右園死児として存在することで災害を引き起こす形態。右園宮に堆積していた死児のように、それと知らず接触するだけで発狂するような被害がこれに当たる。
そしていまひとつは、人間が右園死児であると認識した場合に災害を引き起こす形態だ。これは対象が物体であろうと人間であろうと、もとから右園死児であった存在であろうと、おそらく無差別に作用する。その認識の強度や認識方法、認識する者の人数などにより、災害誘引力は増減、累積すると思われる。
しかるに、空中電波塔と集合汚染体(神像)、ならびにエツランシャは、主に後者の出力形態によって災害誘引力を最大限に付加されたと思われる。全国民の九〇パーセント以上の認識的協力により右園死児としての脅威度が底上げされた。これは右園宮の死児群にも無かった特質である。
空中電波塔に存在する集合汚染体は、もはやかつての報告物ではない。活動停止したはずの死体や死児がわずかにうごめいている。羽田電次の標本とまどいの巨人(脳髄)はまばゆく発光している。首都の安全は保障されない。何者も首都圏に残存してはならない。至急退避せよ。
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