数ヶ月後の録音テープ

 ――(雑音)……い! 笑っちゃうわ! 結局あたしらは蚊帳の外ってワケ! いつもいつもスター性のある人間が物事の中心でさ! そんなに大事!? ふわっと香るトクベツ臭ってやつ! まとえないヤツは一生舞台袖ですかそーですか!! ねえ! ちゃんと聞こえてる!? もしもーし!

 ――はぁい! おひさ! 報告二三号 遺体 の大西真由美ちゃんです! 報告二六号 磁気テープ 以来、軍病院の精神治療センターにぶち込まれてました! このテンションは素ですからご心配なく! 精神ぶっ壊れたわけじゃーございません! 死ぬほどキレてるけどね!!

 ――(物音)……神谷のおじいちゃんが右園のお姫様に選ばれた王子様なら、あたしだってこの遺体に選ばれたトクベツ人間だわ! ねえみんな聞いて! あたしヤバイの! 病院のやつら、みーんな死んじゃうわ! 寝てたらすごい悲鳴がね!? どばっと血飛沫がね! 警報がね!? ランプが真っ赤でね!!

 ――右園死児じゃないの! バケモノじゃない! 病院の職員を殺してるのは人間よ! 金色の服を着たやつらが銃を撃ちまくってる! しかも、あの……なんで!? なんで遺体が私の前にいるワケ!? 収容施設で封印してたんじゃないの!? これがここにいるってことはつまり(雑音)(銃声)

 ――でも大丈夫なの! 心配ない! あたしはトクベツだから! この遺体はあたしを守るために来てくれたんだわ! さっきだってそうよ! 金色野郎が一人、遺体を蹴っ飛ばしてくたばったわ! まだ……まだこんなに骨が残ってる! これはあたしを守る爆弾だわ! あたしは二人目の神谷修二になる! 絶対死なない主役様よ!

 ――そうでしょ!? ねえ! そうでしょ! あたしは助かるわよね!! これは遺言テープなんかじゃないわよ! 絶対局に持ち帰ってスクープに(銃声)(崩落音)(悲鳴)(骨折音)

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