報告三二号 蛆主宿儺(本体)

報告案件 蛆主宿儺(本体)

報告者 冴島将吾


 報告二一号 死児 を発見した冴島将吾はその後ブラインドマン部隊に志願、訓練を終え任務に就いていた。関西地方に派遣された際、彼は突如、軍の制御から離れ、単独行動に移った。冴島が向かったのは報告四号 乾物 の回収された村のある山であった。

 冴島は過去の経緯から調査局に記録媒体を持たされていたため、彼の足取りは一部始終、撮影記録されていた。冴島は山中を進み、乾物の村に到着すると、村の民家のひとつに入った。民家の最奥、半地下の空間には古井戸があり、冴島は即座に飛び込んだ。水中を沈み続け、やがて横穴に入り込んだ。

 約三〇秒後、冴島は泥土の上に這い上がり、装備品のフレア(発炎筒)に着火した。地下には相当な広さの空間があり、行方知れずになっていた村人達が共食いしながらひしめいていた。フレアに興奮した村人達が襲いかかってきたため、冴島は機関銃で応戦した。

 機関銃装弾五八発を撃ち尽くした後、拳銃弾一二発を発射。敵が残存していたためフレアとナイフで対応した。村人鎮圧後、冴島は空間深部で乾物化した人肉をなめている死児を発見。蛆主宿儺の和鏡に彫られた神仏像、縦に裂けた口を持つ目無しの仏と同じ顔をしていた。冴島はこの死児と交戦。戦死した。

 冴島の後を追った部隊員達が、約一時間後に現場に到着。死児を撃破した。冴島将吾の精神に何が起こったのか、死児との間に何らかのリンクがあったのかは不明。すべては右園死児的現象と整理する他ない。死児(後に蛆主宿儺と認定)と村人達は回収され、現在冷凍封印されている。

 神谷修二に本案件に関して意見を求めたが、一言も無かった。

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