報告三〇号 売春婦

報告案件 売春婦

報告者 田島茜(軍研究員)


 都内に右園死児を自称する売春婦が出没するとの情報を受け、都警察が捜査に当たった。売春婦と接触した客やポン引きなどに聞き取りを行ったが、全員が信じがたいほど非協力的な態度を示した。捜査が難航する中、警察官の数名が行方不明になった。

 捜査中に完全に足跡を消した警察官達に、都警察は右園死児的現象の疑いを持ち、軍部に応援を要請。ブラインドマン部隊が捜査を引き継ぎ、一五二時間後に行方不明者全員を発見した。彼らは都内廃ビルの五階にたむろし、退廃的な行為に興じていた。同時に売春婦もそこにいた。

 身長二メートル二〇センチ、体重一五〇キログラム。体毛と爪の存在しない醜女であった。警察官達は売春婦に従者のようにつき従い、彼女の収容後もそばを離れなかった。無理に引き離すと狂乱状態に陥るため、措置入院の体裁でともに収容している。

 売春婦自身は物腰おだやかで、協力的であったが、自認識に右園死児の名が強烈に結びついており、思想洗浄精神洗浄が不能であった。また対話者の精神状態が強く侵されるため、実害性が高いとしてブラインドマン部隊による存在洗浄を試みたが、失敗。ブラインドマンが制御不能になる事態に陥った。

 現在売春婦は収容施設実験室内で生活しており、日々さまざまな洗浄手段が試行されているが未だ効果は見られない。彼女に害を与えようとする者は逆に彼女に強い好意を抱くか、あるいは発狂してしまう。最重要汚染体として施設深部に留め置く方針となり、彼女の精神・肉体的幸福のために予算が割かれた。


 ※報告二〇号 火麻谷一郎の子供達 との関連を至急調査されたし。

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