報告九号 三田倉九

報告案件 三田倉九みたくらきゅう

報告者 政府職員


 三田倉九は明治政府における右園死児研究対策の最大責任者である。右園死児の取り扱い、関連報告の整理分析、世間への情報開示の程度などをめぐって多くの制度や法案を提言作成した。案件報告者への褒賞金制度も三田倉によるものである。

 三田倉は明治政府崩壊後も右園死児対策に関わり続けたが、言語・文字列が殺傷力を持つという右園死児の特性から、対策すべきは右園死児本体よりもそれを拡散悪用する人間であると考え、案件発生の責任者への厳罰化に動いた。数々の非合法措置と行為が問題視され、三田倉は政府から追われる。

 その際に三田倉は右園死児に関連するシステムのほとんどを改悪し、また制度法案に悪意あるノイズを仕込んだ。研究対策の第一人者であったために彼の行為を否定しきれる者がおらず、その傷跡は埋められることなく今日に至る。この報告体系が概要的側面を持つのも三田倉の意図によるものである。

 各案件報告からより具体的な資料・事実記録に至るためには閲覧者の適性や動機、実績など厳格な審査が必要になり、それが右園死児対策の遅れの遠因となっている。三田倉九は晩年自身のコネを駆使し、姓名を右園死児に改名。行方をくらませた後、青森県の海岸に打ち上げられた鯨の体内から発見された。

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