第11話 友達になった

「ちょっと良いかな?」


この恋愛ゲームの主人公である桜田正人が、突然俺と委員長に話しかけてきた。


…桜田正人と森本和樹は全く接点がなかったはずだ。もしかして委員長に用事なのかな?


「あ~…じゃあ俺は先に行ってるな」

そう言って歩きだそうとした。


「…ちょっと!」

委員長が俺の服の袖を掴んできた。

「どうした?」

「…先に行かないでよ」

「お、おう。分かった」


「…俺もここにいていいか?桜田」

「うん。というか二人に用があったんだよね」

「あ…そうだったのか」

委員長は俺の服の袖を掴んだまま顔を真っ赤にして俯いてる。

…勘違いして恥ずかしかったんだろうなぁ。


「で、俺に用ってのは?」

「その…僕も一緒に勉強したいんだけど良いかな??」

「「え?」」

俺と委員長の声が見事にハモった。


「…それは構わないがどうして急に声をかけてきたんだ?」

「その…実は…ずっと森本と話をしてみたかったんだ!」

「…ん?」

「森本は覚えてないかもしれないけど、前に僕が街で絡まれていた時助けてくれてさ。

その後、学校で話しかけたんだけど、「誰だ、お前?」って言われちゃったから、それから話しかけられなくて…。

でも、最近の森本は委員長や隣のクラスの女の子とも仲良く話してたからさ!

思い切って声かけてみたんだ!」


桜田は爽やかスマイルでそう言ってきた。


「そ、そうか。嫌な態度とって悪かったな」

「全然構わないよ!あ、でも一つお願いがあるんだけど良いかな?」 

「俺に出来る事なら構わねぇぞ」


「僕と友達になってくれないかな?」


「…友達?」

「ダメかな…?」


「そんな訳ねぇだろ。よろしくな、正人」

「ありがとう!よろしく、和樹」


…まさか自分が操作していたキャラと友達になる日が来るなんてな~。 


「…盛り上がってる所悪いのだけど勉強はどこでするのかしら?」


委員長がムスッとした雰囲気を纏いながら、俺に聞いてきた。

 

「…ど、どうするかな~。あ、そういえば委員長さっき正人が話しかけてくる前、何か言いかけてなかったか?」

「…言ってない」

「そ、そうか。じゃあ無難にファミレスにしとくか!あ、委員長!正人も勉強会に入れて大丈夫か?」

「構わないわよ」

「ありがとう、委員長!よろしく!」

「えぇ、よろしく」


…う~ん。やっぱり委員長何か怒ってるような気がするな。

何でだ?理由がよく分からん。


「よし!じゃあファミレス行くか!」

俺が歩き出すと、二人もついてきた。


「ごめんね、委員長。和樹との時間を邪魔しちゃって。」

「あ、あなたは何を言ってるのかしら?」

「え?委員長って和樹と付き合ってるんでしょ?」

「つ、付き合ってなんてないからっ!」

「そっかそっか~!」

「ニヤニヤしないでもらえるかしら!」


…うん。なんか二人で小声で話してるみたいな感じだけど全部丸聞こえなんだが!


これ俺は会話に交ざらない方が良いのかな?

よし!分からん!とりあえず歩こう。


そんなこんなでファミレスに到着した。


ドリンクバーから飲み物を持ってきて準備は万端だ!

「よし!じゃあやるか!」

「ええ」「頑張ろう!」

勉強を始めようとした時だった。


「あれ?和樹?」

…勉強はまだ始められそうにないな、うん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る