第3章:七海の願いとリッカの夢

第21話:光の魔術(アカガイヌマジティー)


 ぼくとムイがヤイマ国に来てから、2週間くらいが過ぎた。

 魔力マジグテーきるまで魔術マジティーを使うと、魔力の最大値というのが増える。

 それを知ったリッカにぃにぃは、毎日コッソリ魔力を使い切って気絶している。


「よし、そろそろだな」

「はーい」


 練習場に人がいないときに、大きな魔術を使い続けるリッカにぃにぃ。

 腕輪ウディコールーが光ったら、ぼくの出番だ。

 出番といっても、にぃにぃをだっこするだけ。

 今日もぼくはリッカにぃにぃが気絶する前からだっこしてあげて、にぃにぃが地面に頭をぶつけないように守っている。


氷柱クウリハーヤ!」


 最近にぃにぃがよく使うのは、氷の柱を作る魔術。

 それも、練習場をぐるりと囲む、大量の柱だ。

 この魔術なら、あとからここへ来た人のめいわくにならない。

 すずしくて気持ちいいはず。

 腕輪が光るのは、魔力が残り少なくなったときらしいけど。

 今のにぃにぃは、赤く光り始めたときでも大きな魔術を使える。


「今日もナナミの腕輪は光らなかったな」


 にぃにぃがぼくの腕輪を見て言う。

 ぼくはにぃにぃが新しい魔術を使うと、まねっこして使っているのだけど、どんな大きな魔術でも何回使っても、ぼくの腕輪が光ったことは一度も無い。


「オレもけっこう多くなったはずだけど、まだまだナナミには届かないなぁ」

「でもこうやって毎日増やしていけば、いつかにぃにぃの方が多くなるよね」

「だといいな。でも、その前に大きいにぃにぃたちを追いこしてやるぞ」

がんばってちばりよ!」

任せろまかちょーけ!」


 そんな話をしたからかな?

 リッカにぃにぃが残りの魔力を使って作ったのは、大きいにぃにぃたちの氷の像だった。

 像を完成させたあと、気絶したリッカにぃにぃを部屋に運んだから、ぼくたちは気づかなかったのだけど。

 その氷の像はよくできていたからか、見つけただれかが保存の魔術をかけたらしい。



 翌朝、練習場へ行ってみたら、氷の像はとけずに残されていた。

 オマケに、花かざりまでつけられているよ。


「リッカにぃにぃの作品が、だれかに気に入られたみたいだね」

「女官たちかな? 大きいにぃにぃたちは女の人に人気があるんだ」


 ぼくといっしょに氷の像を見上げているリッカにぃにぃは、ちょっと困り顔だ。

 なんとなく作っただけなのに、練習場のオブジェにされちゃったからね。


「おぉリッカ、にぃにぃたちの像を作るなんて。そんなに好きカナサンだったのかい?」


 後ろからそんな声がして、リッカにぃにぃがギクッ! とした感じでふり返った。

 いっしょにふり向いたぼくも、そこにいるのがだれか、すぐに分かった。

 うれしそうにニコニコしているのは、大きいにぃにぃたちだ。


凄くマール嬉しいよサニシャン~」

かわいいンゾーサーンリッカ、だきしめてもいいかい?」


 って言いながら、大きいにぃにぃたちが近付いてくる。

 リッカにぃにぃは、すごいイヤそうな顔で大きいにぃにぃたちを見たあと、サッとぼくにだきついた。


帰還ケーラ


 ボソッとつぶやくような声で移動魔術を使って、リッカにぃにぃはぼくを連れて練習場からにげ出した。

 すっかり見慣れた星の海で、リッカにぃにぃはフゥッとため息をついている。


「あぶないあぶない、大きいにぃにぃたちにだきしめられたら骨が折れてしまうぞ」

「えぇっ?!」


 リッカにぃにぃの言葉に、ぼくはビックリしてしまったよ。

 骨が折れるって……。

 たしかに、大きいにぃにぃたちは筋肉がいっぱいあって力が強そうだけど。


「まあ、本当に骨が折れたことは無いが、息ができなくて気絶したことはあったな」

「それはあぶないね」

「ナナミも大きいにぃにぃがだきしめようとしたらにげろよ」

「う、うん」


 星の海に入れば安全だ。

 ぼくたちはちょっと一休みしたあと、書物庫へ移動した。

 リッカにぃにぃが見つけた魔術書マジティーショムチを、ぼくに読むように差し出した。

 それは、ぼくがまだ読んだことが無い、光の魔術の本だ。


「もうすぐ夏まつりだからな。ナナミといっしょにやりたいことがあるから、これを覚えてくれ」

「はーい」


 そうして覚えた光の魔術は、何かを清めたり回復したりする効果があるものが多かった。

 ゲームでよくあるキュアとかヒールとかの魔法まほうみたいな効果だ。


「オレもあと少し魔力が増えたら使えるようになる。そうしたらお手本を見せてやるよ」

「うん!」


 光の魔術、楽しみだなぁ。

 ぼくは、リッカにぃにぃが使えるようになる日を楽しみに待った。

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