第15話:腕輪(ウディコールー)
ぼくもリッカにぃにぃもサイオン
みんな、ぼくの
だから、みんな気づくのがおくれたんだ。
まさか、ぼくの
「よし、次は……」
大きな
その上になる魔術を使おうとしたリッカにぃにぃが、急に体の力がぬけたようにフラッとよろけた。
「えっ?! にぃにぃ、どうしたの?!」
ぼくはリッカにぃにぃのすぐ横にいたから、たおれかかるにぃにぃをあわてて支えた。
練習場のはしっこにいたサイオン先生も、あわてて走ってくる。
リッカにぃにぃは気絶していて、両手がダランと下がった。
その手首にある腕輪を見て、サイオン先生はリッカにぃにぃが魔力を使い切ったことに気づいた。
魔力が少なくなると赤く光る腕輪が、
「なんと……マキラさまの魔力が
「えぇっ?!」
先生の言葉に、ぼくはビックリしたよ。
だって、にいにいと同じ数・同じ強さの魔術を使っていたぼくはなんともないから。
「シロマさまは、めまいがしたりねむかったりしませんか?」
「ぼくはなんともないよ」
先生はぼくのことも心配になったみたい。
でも、ぼくの腕輪はぜんぜん光ってないし、めまいもしないしねむくもない。
「魔術の練習はここまでにして、マキラさまを休ませてさしあげましょう」
「うん。今日はぼくの部屋でねることになっているから、そこへ運んであげる」
ぼくはたおれないように支えていたリッカにぃにぃをだっこして、自分の部屋の方へ歩き出した。
なぜか、先生は少しビックリしたみたいだ。
「シロマさまは、ずいぶんと力持ちなのですね」
「えっ? リッカにぃにぃはぼくより体が小さいから、楽にだっこして運べるよ」
「人間の体は、意識があるときと無いときで、重さの感じが変わるのですよ」
「そうなの?」
「今のマキラさまのように完全に体の力がぬけているときは、ふだんよりも重く感じるものなのですが」
「重くはないなぁ。お人形みたいに軽いよ」
話しているうちに、ぼくの部屋の前に着いた。
ぼくはリッカにぃにぃをだっこしていてドアを開けられないから、先生に開けてもらって中に入った。
ベッドにねかせてあげたにぃにぃは、貧血の人みたいに顔が青白い。
「しばらくねむって魔力が回復したら目を覚ましますよ」
「ぼく、リッカにぃにぃのそばにいるね」
「シロマさまもお休みになって下さい。では、私は失礼します」
そう言って先生が帰ったら、かくれていたムイがスーッと姿を現した。
ムイはリッカにぃにぃに近付いて、ヒョイッとだき上げて、不思議そうに首をかしげている。
「どうしたの?」
「七海は、これが人形みたいに軽く感じるのか?」
ぼくが聞いたら、ムイに聞き返されてしまったよ。
ムイは、グッタリしたままのリッカにぃにぃをベッドにもどした。
「うん、ちっとも重くなかったよ」
「じゃあたぶん、七海は力持ちだ。自分よりも少し体が小さいくらいの相手を、軽々と運んだんだからな」
「先生も似たようなことを言っていたなぁ」
元の世界では気絶した人を運んだことがないから分からないけど。
こちらの世界に来て、ぼくは力持ちになったのかな?
「ま、力持ちになるのはいいことだ。これでリッカはいつブッたおれても七海に運んでもらえるから安心だな」
「……そんなしょっちゅう気絶してたまるか」
ムイが話していたら、リッカにぃにぃの声がした。
ぼくもムイも飛び上がりそうなくらいおどろいて、ベッドに横になったままのリッカにぃにぃを見た。
リッカにぃにぃは少しボーッとしながらも、ムイをじーっとにらんでいる。
「知らない声がすると思ったら、キジムナーがいたのか」
「お、おう、じゃましたな。じゃあなっ」
ムイは大あわてで姿を消してしまった。
そういえば、前もリッカにぃにぃはとちゅうで目を覚ましていたっけ。
ムイが見えなくなったら、リッカにぃにぃはぼくに目を向けた。
「ナナミは、キジムナーと友達なのか?」
「ん~、友達なのかな? 元の世界でぼくを助けてくれたけど」
「たよれるヤツなのか?」
「うん、たぶん」
そう答えたとたん、リッカにぃにぃが
リッカにぃにぃが泣くのを見るのは初めてだ。
「じゃあ、オレはいらないか」
「えぇっ?! なんで?!」
リッカにぃにぃはどうしてそんなことを言い出すんだろう?
しかもすごく悲しそうで、ずっと涙が流れつづけている。
「キジムナーは強い
「そんなことないよ!」
どうしてリッカにぃにぃがそんなふうに思ったのかは分からないけど、それはちがう。
ぼくはリッカにぃにぃをいらないなんて言わない。
「ぼくはリッカにぃにぃといっしょにいるのが楽しいよ。魔術もにぃにぃといっしょに勉強したい」
「オレはナナミよりも魔力が少なくて体も弱いけど、いいのか?」
にぃにぃがそう言ったので、ぼくはリッカにぃにぃが魔術の練習中にたおれたことを気にしてるんだって分かった。
他の5人の兄弟がみんな体が大きくて強いから、よけいに気にしているのかな?
「リッカにぃにぃは魔術を使うとカッコイイし、やさしくていろいろ教えてくれるから大好きだよ」
「そ、そうか」
ぼくはベッドにねたままのリッカにぃにぃにだきついて、ハッキリ言った。
そうしなきゃ、わかってもらえないと思ったから。
「だから、これからもよろしくね」
「お、おう」
やっとわかってもらえたみたいで、ホッとしたよ。
ぼくはリッカにぃにぃの隣に横になって、今日もいっしょにねむった。
もうひとりのぼくは、こんなふうに仲良くできなかったのかな?
魔術が1つも使えないから、いっしょに勉強はムリだったのかな?
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