第12話:優秀(ジョートー)
オイラは姿をかくしたまま七海たちについて行って、七海が読んでいる本をコッソリ後ろから見た。
たとえば、昨日リッカが使っていた「
火の玉を作り出して、自由に動かす魔術だ。
オイラは術の名前なんか言わなくても、火を起こしたいと思えばできるけどな。
それと、「
強い風をふかせて、いろいろな物を飛ばす魔術だ。
オイラは七海のテストの紙を飛ばしたときみたいに、自由に風を起こすことができるぞ。
あと、「
オイラみたいに水の上を歩いたり走ったりできるらしい。
これが使えたら、海でおぼれたりすることはないな。
「では、魔術の適正を見てみましょうか」
先生はそう言って、七海に1枚の紙を差し出した。
ほうほう、さっそくテストか。
紙には魔術の効果だけが書いてあって、その下に魔術の名前を書くというテストだ。
「全部答えられなくてもいいのですよ。一度にいくつ覚えられるかを見て、今後のスケジュールを組むためのものですからね」
なるほど。
生徒に合わせて授業を進めてくれるのか。
「1つでも答えられたら
リッカがそんなことを言っている。
それで気が楽になったのか、リラックスしてテストを受けた七海は、ふたりが思っていた以上の結果を出した。
「なんと、全て覚えられたのですか」
「うん」
後ろで見てたオイラもビックリしたぞ。
七海は、1回読んだだけで、
「異世界のナナミは
「えっ」
朝の授業が終わった後、リッカが七海にコッソリ言った。
七海は0点という言葉に反応して、ドキッとしている。
そりゃそうだよな、魔術じゃないけど七海も0点をとっているから。
「0点ってことは、魔術を1つも使えないってことだ。こっちのナナミはたぶん、魔術の適正が無かったんだろうな」
「0点は、適正が無い……」
つぶやきながら、七海は何かに気づいたみたいだった。
もしかして、七海が算数のテストで0点をとったのも、適正がないからか?
「きっとお前ならすぐ魔術を使えるようになるぞ。にぃにぃがお手本を見せてやるから練習場へ行こう」
「うん!」
リッカにさそわれて、七海はうれしそうについて行く。
ふたりが向かった先は、昨日リッカが魔術を使っていた練習場だ。
「魔術の練習のときは、この
リッカはポケットから石でできた腕輪を出して、自分の手首にはめた。
そういえば、昨日たおれたときは、それをつけていなかったな。
「昨日はこれをつけ忘れたから、魔力が無くなるまで魔術を使ってしまったんだ」
腕輪を見ている七海に、リッカははずかしそうに顔を赤くして言う。
そうかそうか、自分の魔力が少なくなったことに気づかなくて、大きな力を使ったから気絶したのか。
プンプンおこって、八つ当たりみたいに魔術を使っていたものな。
「今日は腕輪が光ったらやめるから、たおれたりしないぞ」
そう言ったあと、リッカは七海に基本の魔術を見せてくれた。
ゴルフボールくらいの大きさの火の玉、水の玉、石ころ。
手の近くだけでクルクル回る風も。
「いいなぁ魔術、ぼくにも使えるようになるかな?」
「ナナミはもう魔術の名前を覚えたから、使いたい魔術のイメージがハッキリ心の中にうかんだら、できるようになるぞ。あとは、魔力がどのくらいあるかだな」
「
「あれは国宝だから、めったに使えないぞ。腕輪なら職人に作ってもらえるから、それをつけるといい」
「職人、どこにいるの?」
「あとで連れていってやるよ」
話しながら、リッカが右手を空へ向けた。
何か大きな魔術を使うのかな?
七海もワクワクしながら見ているぞ。
「今日は調子がいいみたいだ。腕輪もまだ光らないし、最後に大きいのを見せてやるよ」
「リッカにぃにぃ、
七海に応援されて、リッカは気分がいいのかニッと笑う。
リッカが使った「大きいの」は、なんかのゲームで勇者が使うような魔術だった。
「
リッカは空へ向けた右手を、的に向けてサッとふり下ろした。
ドーンッ! って大きな音がして、カミナリが落ちてきたぞ。
七海はビックリして3秒くらい固まったけど、すぐに感動の声を上げた。
「すごい! 勇者みたい! リッカにぃにぃカッコイイ!」
「うむ。にぃにぃは
七海は感動すると、だきつくクセがあるんだな。
リッカは七海にカッコイイと言われて、満足そうに笑っている。
それからリッカは自分の腕輪を見て、アレッ? と少し驚いた顔になった。
「変だな。そろそろ赤く光りそうなくらい魔力が減ったはずなんだが」
「腕輪、こわれたのかな?」
リッカがつけている腕輪は、全く光っていない。
七海も言っているけど、オイラも腕輪がこわれたかと思ったよ。
「もう少し火球でも使ってみるか。七海、オレが気絶したらお前の部屋に運んでくれ」
「うん」
そんな話をした後、リッカが5回くらい火球を使うと、腕輪が赤く光った。
リッカは気絶しなかったけど、ちょっとねむたそうだ。
「こわれてないみたいだな。よし、今日はこれくらいにしてひるねしよう」
と言ってリッカが向かったのは、七海の部屋。
七海がひとりぼっちでさびしがってないか心配する
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