第5話:魂の鏡(マブイヌカガン)★
知らない世界。
知らない島。
知り合いなんているはずがない場所で。
ぼくは、生まれたときからよく知っている人の声を聞いた。
「どうしたの? ナナミ」
「えっ? ママ?!」
きれいな服を着たその人は、ぼくのママにそっくりだった。
その人が呼んだのはぼくの名前だったから、ぼくはママがオシャレして来たのかと思ったよ。
「まあナナミ、ママだなんて。
「え?」
このとき、ぼくは目の前にいる女の人が、ママじゃないことに気づいた。
だって、ぼくはいつもママってよんでいるし、ママは「
この女の人はぼくのママじゃなくて、あの子のママなんだ。
ぼくはママににてるってよく言われるから、ぼくにそっくりなあの子のママが、ぼくのママにそっくりだとしても不思議じゃないのかも。
でも、どうしてこの人は、ぼくをシロマとよばずにナナミとよぶんだろう?
「どうしてぼくの名前を知っているんですか?」
「え?」
ぼくが聞いたら、シロマのママはビックリしている。
この子は何を言い出すの? って思ったみたい。
「どうしてぼくを『シロマ』とよばずに『ナナミ』って呼んだんですか? 」
ぼくは質問を変えてみた。
シロマのママは、なんだか心配そうな顔でぼくを見ている。
「だれからぼくの名前を教えてもらったんですか?」
ぼくは続けて聞いてみた。
シロマのママが、もっと心配そうな顔になってきちゃったぞ。
「だれからも教えられてはいないわ。ナナミの名前は私がつけたのよ。シロマというのはナナミの
「『あざな』って何ですか?」
「家族以外の者がよぶための名前よ。私はナナミの家族だから、シロマという字では呼ばないの」
シロマのママの話を聞いているうちに、ぼくはあの子がナナミという名前だと知った。
あざなっていうのはよく分からないけど、ゲームとかアニメの「二つ名」みたいなもの?
あ、そういえば
昔の中国の人は、
諱が本当の名前で、それは両親か主君しかよんではいけないものだった、とか。
それはともかく。
シロマのママも、ぼくをシロマとまちがえているってことは分かった。
とりあえず、ぼくはシロマとは別人だってことを分かってもらわなきゃ。
「ぼくはこの家の子供のシロマくんじゃないです。ぼくは城間家の七海という子供です。ちがう子なんです」
「どういうことかしら?」
見た目そっくりで名前まで同じだから、分かってもらうのがむずかしいけど。
とにかく分かってもらわないといけない。
「ぼくは、こことはちがう島の子です。星の海みたいなところで、シロマくんとすれちがいました。そのあと、この島に来ていたんです」
「ちょっと待って。今、星の海と言った?」
「はい」
あの不思議な場所、どっちを見ても星空ばかりの宇宙みたいなところを、ぼくは『星の海』と言った。
シロマのママは、何か分かったみたいだ。
「確認したいことがあるわ。いっしょに来て」
ぼくはシロマのママに手を引かれて、いっしょに歩いた。
シロマのママは、なんだかすごくあわてているみたい。
お城みたいに大きな家の中を、シロマのママは早歩きで進む。
手を引かれているぼくは、ちょっと小走りで進む。
連れて行かれた場所は、地下にあるドアの前だった。
「
シロマのママがドアに片手を向けて言ったら、ドアが光ってゆっくりと左右に開いた。
すごい、なんか
開いたドアの向こうの部屋には、ぼくが今まで見たことがないめずらしい物がたくさん置いてあった。
宝箱がいっぱいあるよ。
ゲームでよく見る
シロマのママは宝箱の中から丸くて平べったい物を取り出して、ぼくに差し出した。
「これに手をふれてみて」
「はい」
シロマのママに言われて、ぼくはその丸くて平べったい物に手をふれた。
丸くて平べったい物がポウッとかすかに光って、文字がいっぱい出てきた。
「やっぱり……」
と、シロマのママが言った。
いっしょにその文字を見たぼくは、ここは異世界なんだなって分かった。
「これは【
丸くて平べったい物は、「マブイヌカガン」というらしい。
ゲームのステータス画面みたいに、ぼくについてのことが出ている。
ぼくの名前の下には、「ヤイマ国第七王子ナナミ・シロマ・ユーマンディと存在を同じくする異世界人」って書いてあった。
※挿絵
https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093083938546310
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